努力をしていないから結果が出ない。お金持ちになれないのは負け組。そんな西洋哲学の象徴ともいえる自己責任論では、「給料を上げたければ、自分の努力で頑張れ」というスタンスです。これによって多くの労働者が孤独や不安を抱えることとなり、日本では働き方改革に取り組まなければならない要因の一つになっていました。
こうした理論はすでに時代遅れですが、もしまだ脳裏に残っているという経営者やリーダーがいれば、今すぐ捨て去って欲しいと思います。もちろん、成功に向けて目標を設定すること、それを達成することはとても大切なことです。しかし極度に個人主義、自己責任に偏ることで、働きにくい社会、仕事で幸せを感じづらい労働環境ができてしまうため、注意が必要です。
20世紀と21世紀、経営スタイルの比較
ウェルビーイングを実現する3ステップ
では、具体的にどう行動すればいいのでしょうか。私は次の3つのステップを経営者やリーダーが理解し、社員にも意識づけすることを推奨しています。1. チームで勝ちパターンを作り、効率を上げる
一部の社員が成果を上げる構造ではなく、チーム全員が一丸となって生産性を上げる仕組みを作ること。マーケティングやデジタルの活用など、「普通の人が非凡な成果を出せる勝ちパターン」をチームで生み出すことが最初のステップです。2. 教育によって、収益率を高める
社員の生産性を上げるためには、新しいマーケティングやDX、コミュニケーションスキルなどを学んでもらうことが大切です。それによって、収益性も高まります。社員にはつねに学び続けなければならないと伝え、例えばセミナーや書籍から学ぶことを昇進や昇給の条件とすることを明示します。これからの時代は、教育こそが競争優位性の源泉です。3. 社員に自己肯定感をもたらしつつ、給料を上げる
事業の収益性を高めたら、社員の給料を引き上げます。ポイントは、教育によって社員に自己肯定感をもたらしつつ、社員の意識と会社の業績が一緒に良くなっていく仕組みを作ることです。以前から私は拙著「絆徳経営のすゝめ」で、「社長は社員の給料を上げることを目標として掲げてください」と伝えています。給料を上げていかないと、優秀な人材は流出してしまいます。これは綺麗ごとではなく、今後、さまざまな経営問題を解決する処方箋になるはずです。上記から、経営者の意識改革と社員の教育が優先事項であることが分かります。ステップを踏むことで代替可能のマニュアルワーカーを、自分の知識やスキルで新たな付加価値を生み出すナレッジワーカーへと、アップデートできるはずです。