「スモール・ジャイアンツ」は、Forbes JAPANが2018年から続けてきた名物企画のひとつ。会社の規模は小さくても、世界を変える可能性を秘めた企業をアワードというかたちで発掘し、応援するプロジェクトだ。
アワードの対象となるのは、創業10年以上、売り上げ100億円未満、社員数500名以下の企業。今年も約110社の候補から書類審査を経て、ファイナリスト7社を選出し、11月に行われたピッチイベントを経て、福岡県うきは市を本拠とする産業機器メーカー「筑水キャニコム」(代表取締役社長 包行良光)がグランプリに輝いた。
今号では、そのファイナリストたち7社を総力取材。
「草刈機まさお」「安全湿地帯」「北国の春…ぉ」といったユニークなネーミングの草刈機や運搬車を製造・販売する「筑水キャニコム」、虫オタクのナレッジを武器に20年間増収増益を続ける防虫商社「環境機器」、地域の問題となっていた牛の尿を原料に、微生物の力で消臭剤や液体たい肥に生まれ変わらせた「環境大善」など、独自の着眼点と意外な戦略によってニッチトップとなった7社のビジネスモデルや取り組みについて紹介していく。
グランプリの筑水キャニコム
世界で勝負する彼らは、どのようにその「強み」を差別化し、武器にして成長してきたのか。独自の方法で可能性を切り拓いた試行錯誤の道のりには、多くのビジネスのヒントが詰まっているはずだ。
また、アワードの審査員を務めたスノーピークの山井太、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授、ブルーボトルコーヒージャパン元取締役の井川沙紀、スモール・ジャイアンツ第一回のファイナリストである大都の山田岳人、エグゼクティブ プロデューサーである内田研一らも登場。これからの「スモール・ジャイアンツ」企業が世界で活躍する可能性について、オピニオンを展開する。
山井はこれから経営の仕方にシフトチェンジが起こると話し、「損得軸」ではなく「好き嫌い軸」での経営がより成功しやすい「マニア資本主義」の時代がやってくると予想。また、入山教授は、日本が「GAFA」に負けたのはスマホの中のプラットフォームにすぎない、これからのIoT時代には、強いモノづくりのノウハウを持つ日本の中小企業×DXが最強、と主張する。
内田は、今回のファイナリストの共通点として、「人がやらない、むしろ嫌がることをあえてやる」ことで成功した企業が多かったことを挙げた。「カネだけ、いまだけ、自分だけ」から「世のため、人のため、自分のため」の経営が幸せな人を増やすと総括している。
日本にある会社の99.7%は中小企業である。「日本はもうだめだ」「厳しい時代は続く」といったネガティブな雰囲気をぶっ飛ばし、世界で活躍するスモール・ジャイアンツたち。取材や撮影でその経営者や従業員たちのパワーと明るさに触れて、改めて「日本はダメなんかじゃない」と実感した。
また、「Forbes JAPAN」 2023年4月号の表紙を飾るのは、映画監督の北野武だ。北野がスモール・ジャイアンツとどう関係するのか、疑問に思った人も多いかもしれない。それは、彼が20年以上にわたって続けてきた途上国での「ある取り組み」に関係している。「世界の北野」と世界で尊敬されている小さな日本企業の物語を、ぜひ本誌でチェックしてほしい。
さらに、ビジネスを生む「新・地域エコシステム」18エリア、日本発ディープテック50社の発表と、盛りだくさんの内容でお送りする。アイデアとヒントと情熱の物語が詰まった一冊を手に取ってもらえたら幸いだ。
【2月25日発売】「Forbes JAPAN」 2023年4月号