ボリビアの炭化水素・エネルギー省は1月20日、総額10億ドル(約1350億円)以上を投じて2025年までにリチウムイオン電池の国内生産を目指すリチウム鉱床開発事業をめぐり、リチウムイオン電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)率いる中国の企業連合(コンソーシアム)を選定したと発表した。
これが世界経済と米国経済の未来にとっていかに重要な意味を持つかという点は、世界的なグリーンエネルギー技術開発への取り組みに触れるまでもなく、いくら強調してもしすぎることはない。米地質調査所によれば、ボリビアには世界最大のリチウム鉱床がある。埋蔵量は推定2100万トンに上り、現在わかっている世界のリチウム埋蔵量の4分の1近くを占めるが、今後は中国がその支配権を握ることになる。また、中国はすでに世界市場に出回るリチウムイオン電池の75%以上を生産している。したがって、中国は重要な資源であるリチウムを世界規模で独占するかたちで、垂直統合を達成することになるのだ。クリーンエネルギーの実現に必要な電池の製造に不可欠な原料のほとんどを掌握するだけでなく、クリーンエネルギーを実現するカギとなる電池そのものも、ほぼすべてを中国が製造するというわけだ。
もちろん、これらは一朝一夕に実現するものではない。ボリビアのルイス・アルセ大統領は2025年第1四半期をめどにリチウム電池の商業開発と輸出を目指しているが、国内には大きな障害が残る。膨大な未開発の埋蔵量を誇りながら、ボリビアのリチウム生産量はいまだ年間543トンにとどまる。対して、世界の50%以上を賄う首位オーストラリアの生産量は年間5万5000トンだ。また、ボリビアでは以前、オルロやウユニでのリチウム鉱山開発の試みが地元の大きな反対に遭っており、反対運動は簡単には収まらないだろう。ボリビアの鉱業法とリチウム鉱床生成法には、資源開発における政府の権利を保障する規定があるが、国内にはかねて鉱業への激しい反感がある。ボリビア国民の多くは、鉱山開発によって地元住民の伝統的な生活様式が文字どおり破壊されかねないと考えているのだ。