弾薬、北朝鮮から買ったワグネルと韓国から買った米軍の損得勘定は?

民間軍事会社ワグネルのロゴ(Photo by Maksim Konstantinov/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

北朝鮮がどの程度の品質の砲弾やミサイルを生産しているのか、詳細は不明だ。北朝鮮は過去、旧ソ連から戦車や戦闘機などの供与を受けて来たが、最近は両国の軍事交流は大幅に減っている。ワグネルが弾薬不足で苦しんでいる背景の一つに、北朝鮮軍からの砲弾提供を巡る計算違いも含まれているのかもしれない。

もちろん、砲弾の数の維持は、世界の軍隊が共通に抱える悩みのひとつだ。当たり前の話だが、有事になって、砲弾の消費量は爆発的に増える。平時から、有事を想定した大量の生産ラインを維持しようとすれば、市場原理に合わず、採算が取れなくなる。このため、生産ラインをある程度国有化して維持し、そこに民間企業の関係者をスタッフとして向かい入れて、運営する国もある。日本政府も今月10日の閣議で、自衛隊の任務に不可欠な装備品を製造する企業について事業の継続が困難になった場合、生産ラインを国有化して別の企業に委託することを可能にする法案を決めた。

韓国聯合ニュースなどによれば、米国は韓国の155ミリ砲弾10万発を購入することで合意したという。米韓関係筋によれば、韓国が紛争地域への殺傷兵器の支援を行わない原則を維持する代わり、ウクライナ支援で生じた米軍の砲弾不足を解消する役割を買って出たという。

米韓は有事の際、1人の司令官の指揮の下で行動する連合軍だ。合同軍事演習も頻繁に行っている。韓国は輸出戦略もあって、NATO基準を厳格に順守している。こうした状況から、米国が韓国に「砲弾不足」の助っ人を頼んだということのようだ。

今回のウクライナでの砲弾不足を巡る対応は、普段からの同盟・協力関係の維持がいかに重要かということを教えてくれる。

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文=牧野愛博

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