先週、メルセデス・ベンツのSクラス電気自動車版「EQS 450+」に試乗してきたが、このクルマは、これまでの高級EVのイメージを一新し、それこそ、異次元に到達している。2030年にはほとんどのクルマが搭載しているであろう、驚異的な先進技術や機能を搭載した次世代のタイムマシンだ。もちろん、EQS(EQ + 「Sクラス」の S)であることは、この全長5.2メートルの滑らかでエッジのない巨体メルセデスのフラッグシップSクラスを、電気化で再解釈したことを意味している。V12エンジンの代わりに107.8kWhのリチウムイオン電池を搭載し、333psの電気モーターで後輪を駆動する。
正直なところ、同車は美しいクルマではない。実際、ガソリンエンジンを積んだSクラスの同胞と比べると、この5ドア電動ハッチバックは少し奇妙な形をしている。ボンネットの下に巨大なV12エンジンを収める必要がないため、デザイナーはフロント部分のサイズとボリュームを減らすことができた。空力的に最も優れたスタイリングを目指し、ずんぐりとしたノーズを採用し、リアは鋭く立ち上がり、その間にドーム型の細長いパッセンジャーセルが配置されている。これは未来の形だ。
そのおかげでメルセデスは、前代未聞の空気抵抗効率「0.20」を達成し、世界で最もエアロダイナミックなクルマになったと主張している。EVに特化した特注のプラットフォームを採用し、スタイリストは風洞実験において滑りやすい外装のためにデザインの格好よさを犠牲にしたといえる。
もちろん、ラジエーターがない車なので、物理的なグリルはない。その代わりに、メルセデスの小さな3ポイントスターを何百個もあしらったFRP製の大型「人工的」グリルが効果的に配置されている。スクエアなSクラスとは対照的なファストバックのフォルムは、最高の燃費を実現するためにデザインされたものだ。