2023.02.24 12:00

新型プリウスで「CO2削減」狙うトヨタの主張は正しいのか?

Getty Images

トヨタは電気自動車(EV)に関して遅れをとっていると批判されているが、世界最大の自動車メーカーである同社は「EV」と「プラグインハイブリッド車」、プリウスのような「ハイブリッド車」をブレンドした戦略が、直近のCO2排出量の削減に大きな役割を果たすと述べている。

トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラットCEOは、1月の世界経済フォーラムで、地球温暖化につながるCO2排出の急激な増加を食い止める最善の方法は何かというテーマで講演をスタートさせた。トヨタのチーフサイエンティストである彼の提案は、世界の脱石油化を進めるために、可能な限り迅速に自動車の電動化を進めるべきだという声に少し逆行している。

「なるべく多くの自動車を電動化すべきですが、電動化する方法を1つに絞る必要はありません」とひげ面のプラットはスイスのダボスの会場で語った。バッテリーのみを動力源とするEVは、CO2の排出量を削減できるが、そのためには膨大な量のリチウムやコバルト、ニッケルなどのレアメタルを使ったリチウムイオン電池が必要になる。

プラットによると、プラグインハイブリッド車はEVより少ない量のレアメタルで製造が可能で、プリウスのようなハイブリッド車の場合は、ごくわずかな量に抑えられるという。Tesla(テスラ)のモデルSやフォードの新型EVに使用される100kWhのバッテリーパックは、90台以上のプリウスに必要なレアメタルを含んでいるとされる。

さらに、ハイブリッド車は走行中にEVの2倍のCO2を排出するが、バッテリーのサイズを抑えることで、製造段階で発生するCO2を削減できるという。「私たちは、全面的にハイブリッド車に移行することを提案しているわけではありません。しかし、充電インフラが整っていない地域や簡単にアクセスできない人々がいる地域では、このような選択肢の方が優れていると考えています」

彼の主張は環境保護主義者には不人気だが、CO2排出を削減するという点では、直近の最大の社会的利益につながるものと言える。テスラの米国で最も安い「モデル3」の価格が4万3000ドル(日本では536万9000円)であるの対し、新型プリウスの価格は2万ドル(約270万円)台で、購入可能な人の数は劇的に多い。

米国におけるCO2排出量の27%を輸送が占めており、ガソリンやディーゼルエンジン駆動の自動車をEVに置き換えることは正しい選択だ。しかし、新車のEVの平均価格は約5万9000ドル(約800万円)と高価で、多くの人にはまだ手が届かない。さらに、EVに必要なレアメタルの採掘には、環境への悪影響だけでなく児童労働などの社会的マイナス面が指摘されている。
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編集=上田裕資

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