教育

2023.03.02

アマゾンにはなぜ「インストラクショナルデザイナー」がいるのか?

Photo Illustration by Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

LMSとオンラインテストで学習者の成績をトラック


アマゾンでインストラクショナルデザイナーが作るコースの特徴について、あと三点挙げてみたい。

1.ラーニングマネジメントシステム(LMS)

一点目は、コロナの追い風もあってトレーニング・研修のデジタル化が進み、最近は取り入れている企業も少なくない「LMS」の導入である。研修のアサインやトラッキングを、デジタルのプラットフォーム上で行う。

2.コースの最後にオンラインテスト

二点目は、コースの最後にオンラインテストが設けられていることだ。LMSとオンラインテストにより、監督者やマネジャーは、チームのうちの誰がどのコースを受けたか、理解度がどのくらいあるか、成績の傾向はどうか、などを一目で確認することができる。また、オンラインテストは、一定の水準に点数が届かなかった場合には、再度テストを受けさせる設定にもできるので、プロセスに関する理解度をチームメンバー間で揃えることに役立つ。

3.研修後にアンケート

三点目は、研修の後にアンケートを行って、学習者、研修に参加した人からフィードバックをもらうことだ。このアンケートの作成もインストラクショナルデザイナーが行うことが多い。そして、アンケートの結果をもとに、次の研修をさらに効率的で実のあるものにしていくサイクルを回していく。

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ここまでみてきたように、インストラクショナルデザイナーの仕事とは、研修・学びそのものや学びによる成果をより良いものにしていくPDCAサイクルを回す、いわば学びを見える化して改善サイクルに乗せる仕事、と言うことができるだろう。

余談であるが、米国で、企業内で働くインストラクショナルデザイナーは、グラフィックデザインやアニメーションクリエーションの高い能力を持っていたり、Javaスクリプトのコードを書いてより楽しみながら学べるeラーニングコースを作り上げるスキルを備えていたり、はたまたラーニングマネジメントシステムの管理経験によりデータや数字に強かったりと、従来の研修担当者の対人研修のイメージを飛び越えて、デジタルに強い人材が就いている例もある。

日本ではまだなじみがない職業だが、デジタルでの学びに、日本が強みを持つゲームやアニメーションなどを組み合わせることができれば、インストラクショナルデザイナーが生み出す学び体験を大きく飛躍させることも可能なのでは、と筆者は考えている。​


高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系大手エンタメ企業勤務。

文=高以良潤子 編集=石井節子

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