教育

2023.03.02 11:30

アマゾンにはなぜ「インストラクショナルデザイナー」がいるのか?

「メンバーの知識を均一にする」ことに寄与


「アマゾンはどんな企業なのか」という問いにはいくつもの答えが存在するだろうが、「大規模なオペレーションを効率的に回す手法に長けた企業である」は、一つの答えになりうる。数億種類に上る種類の商品をウェブサイト経由で販売し、在庫を壮大な規模の倉庫で管理し、翌日、サービスによっては当日に配送する……。

商品の販売、在庫管理、配送、カスタマーサービスなど小売業の一連の流れの複数のプロセスで大規模なオペレーションが存在し、大人数のチームが効率的なオペレーションを日々動かしている。

各オペレーションチームが、それぞれが従事するプロセスについて正確に理解し、同じ情報を共有していることが、毎日のオペレーションを行う上では必要不可欠だ。

日本においては、業務やそれにまつわる知識は先輩から後輩に伝えられることが多いというのが筆者の認識だ。アマゾンでももちろんそういった面もあるが、オペレーション組織では、インストラクショナルデザイナーが作ったトレーニング資料やeラーニングコースが業務の研修に用いられることが一般的だった。

また、一部ローカライズされる面はあるものの、オペレーションのプロセスの基本形は米国本社で作られた仕組みで、トレーニングも付随して米国からやってくる。

口伝ではなくトレーニング専用の人=インストラクショナルデザイナーが作ったトレーニング資料を使ってトレーニングを行うことのメリットは、教わる先輩によって知識やプロセスが少しずつ違う、といったブレが発生しにくいことが挙げられる。

仕事に携わる全員に同じ作業を同じようにミス・漏れなく行うための知識とスキルを与え、プロセスを効果的、効率的に定着させることは、大規模オペレーションを効率的に実施するには不可欠だと言えるだろう。

もともと、米国でインストラクショナルデザインが発展したのは、第二次世界大戦中。大勢の兵士の育成・訓練を短期間で効率的に行うニーズに対応するため、心理学や情報理論などをもとに兵士の行動や習性などを分析し、訓練をより効果的・効率的に行うための方法が考え出され、研修の成果を高め、熟練度を短期間で上げることに寄与したという。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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