北米

2023.02.26

米国の湖底で170年間眠るウイスキー、巨額の値が付く可能性

Getty Images(Photo by Fraser Nivens/Florida Keys News Bureau via Getty Images)

船の難破により海底に沈み、意図せず熟成を重ねたウイスキーは「sunken scotch(沈没スコッチ)」と呼ばれ、ウイスキー愛好家の想像力と購買欲を掻き立ててきた。米ミシガン湖に沈むアメリカンウイスキーも、近く大きな関心を呼ぶかもしれない。

それは、1854年12月のある不運な夜に始まった。蒸気船ウェストモーランド号(The Westmoreland)は、ミシガン湖北部の冷たい水域で沈没。死者数は17人に上り、積荷のウイスキーだる約280本も水底に沈んだ。

この貴重な貨物は、2010年に難破船ダイバーのロス・リチャードソンがウェストモーランド号の残骸を発見するまでほぼ忘れられていた。船の残骸は、ミシガン州のプラット湾内、深水約61メートルで見つかった。この水域は水温が低く穏やかであることから船の保存状態は驚くほど良く、これまで見つかった19世紀の難破船の中でも最高水準だったという。

船内には今も積荷のウイスキーだるが残されている。ガラスの瓶ではなく木だるに入っていることから、残っているウイスキーの量や質は保証できないが、その価値は相当なものになるだろう。

2021年には、スコットランド沖で難破したSSポリティシャン号から引き揚げられたスコッチウイスキーのボトル1本が競売にかけられ、1万2925ポンド(約210万円)の値が付いた。

ミシガン湖に沈む280本のたるからは、運が良ければ最大で5万6000本のウイスキーが抽出できる。仮に1本の値段がSSポリティシャン号のウイスキーと同じなら、総額は1170億円以上となる。

英大衆紙ザ・ミラーは今月、リチャードソンの話として、1854年当時のとうもろこし品種は現在のものと大きく異なっていたため、ウイスキーの味も違う可能性があると指摘。地元蒸留所も科学調査のためにウイスキーの回収を望んでいると報じた。

ただ、このウイスキーを入手したい人は、気長に待とう。五大湖からの遺物回収には許可が必要で、リチャードソンによると許可が出るまでには数カ月、あるいは数年かかる可能性があるという。

しかし、このウイスキーが170年にもわたり人の口に運ばれるのを待っていたことを考えれば、さらに数年待たなければいけないとしても大したことではないだろう。それまでどうしても待てないのなら、湖畔から長いストローを伸ばしてみてはいかがだろうか。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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