ソビエトのボストーク2Mロケットは、1980年に偵察衛星の打ち上げに使用された後、地球周回軌道に放置された。これは当時としてはごく一般的な処分方法だった。
天文学者のジョナサン・マクダウェルはTwitter(ツイッター)への投稿で「ロケットは1980年代半ばから完全に機能停止していたため、大気圏への再突入を制御するすべはなかった。大気との摩擦により、軌道が次第に小さくなった」と説明した。
An abandoned 1400 kg Soviet Vostok-2M Blok E rocket stage, which launched an Ikar sigint satellite in June 1980, made an uncontrolled reentry over Novaya Zemlya at 1016 UTC Feb 20 after 42.7 years in orbit
— Jonathan McDowell (@planet4589) February 20, 2023
米政府系の宇宙研究開発団体Aerospace Corporation(エアロスペース・コーポレーション)も、北極海ノバヤゼムリヤ列島のロシア領上空で起きたロケットの再突入を追跡した。
マクダウェルは、ロケットの大きさから考えてその一部が地表に衝突した可能性は高いが、落ちた場所はおそらくロシアの荒野か北極海だとしている。
1.4トンのロケットは再突入を観測するのに十分な大きさだが、近年制御不能の再突入を繰り返して問題になっている中国の「長征」ロケットの重量は20トン以上であり、これと比べると大きくはない。
最近のロケットの多くは再突入の制御を可能にする推進システムを装備していて、南太平洋などの広大な無人地帯に向けて誘導されることが多い。
ソビエト製ロケットの再突入は制御不能だったものの、地球近傍から巨大物体が1つ取り除かれたことで、軌道は多少なりとも安全になったと言える。もしこのロケットが軌道上で衝突を起こしていれば、何百、何千という小さな破片となって、将来の衝突リスクを高めていただろう。
最悪の場合、物体同士の衝突が雪だるま式に増加することで軌道に大量のデブリが散乱し、衛星を誘導するのが困難になる現象「ケスラーシンドローム」につながる可能性がある。
(forbes.com 原文)