「逆転のトライアングル」という邦題は、ややネタバレ感もあるが悪くはない。原題は「Triangle of Sadness」で、「悲しみのトライアングル」とでも訳せるだろうか。
原題から察せられるとおり、スウェーデン出身のオストルンド監督にとっては、初めての英語作品となる。それだけに作品賞と監督賞(しかも脚本賞まで)にノミネートされた今回のアカデミー賞への期待は大きいかもしれない。英語作品に挑戦した感想をオストルンド監督は次のように述べている。
「僕はいつもキャステイングとリハーサル中に、俳優たちと一緒にその場で1つひとつのシーンをつくってみて、それが脚本のセリフより良いときは、脚本を差し替える。英語を話す俳優たちと仕事をすれば、抜けているかもしれないものが補われ、言語もさらに豊かになって、もっとニュアンスのあるものにできる」
オストルンド監督の作品はどれも、人間に対する卓抜な観察眼から生まれている。その視線は心理の裏をも見透かす鋭いものだ。そしてそれが観る者を困惑させるブラックなコメディへと結びついていく。
今回、スウェーデン、ドイツ、フランス、イギリスの合作でありながら、英語で作品を撮ったのもオストルンド監督には新たな挑戦だったのかもしれない。
実は、この「逆転のトライアングル」には、最後に極めつけの「逆転劇」も控えている。もちろんネタバレともなるので、それは観てからのお楽しみということで、ご容赦いただきたい。近年、アメリカで製作された以外の作品にも受賞のチャンスが増えたアカデミー賞、この作品がダークホースとなることもありえるかもしれない。
連載:シネマ未来鏡
過去記事はこちら>>