ビジネス

2023.03.01

「起業家版の大谷翔平」を 日本企業の米国上場を牽引する投資家の野望

DRONE FUND創業者でPONO CAPITAL社外取締役の千葉功太郎氏

「起業家版の大谷翔平」を生み出したい

千葉氏が日本企業のNASDAQ上場を牽引する理由として、根底には「日本を良くしたい」という強い思いがある。上場する場合、アメリカではダイレクトリスティングにリスパック、トラディショナルなブックビルディングと、起業家には3つの選択肢がある。それぞれメリット・デメリットや時価総額がつく考え方、プロセスも異なる。

「だからこそ、アメリカの起業家はより真剣に自分の未来を考えるんです。だけど日本には選択肢が1つしかないので、上場するとなったら自動的にブックビルディングシステムの上に乗って、主幹事証券がつきます。バリュエーションでは、自分たちでコントロールも交渉もできないし、受け身なんです。僕は、ダイレクトリスティングや日本版SPACみたいなものを日本に導入し、日本のIPO市場活性化と規模拡大を実現したいと考えています。

そのためには、起業家版の大谷翔平を生み出さなければならない。まずはメジャーリーグ、アメリカで大活躍し、上場する日本のスタートアップが、最低でも3社出てくるようにしたい。矢継ぎ早にそうした企業が出てくれば、彼らが日本からいなくなってしまうという危機感が日本の市場には生まれるでしょう。それをバネに、日本でSPACなどの仕組みを整備する機運が高まるのではないかと考えています」

では、どうすれば時価総額を引き上げる次世代の起業家が生まれるのか。その答えとして、「全員がスタートアップ思考を持つことが大切」だと千葉氏は言う。

日本ではこれまで、教育やキャリア構築の軸が、いかにして大きく有名な組織の傘下に入るかに置かれてきた。勉強をして良い高校・大学に入り、有名な大企業に入社して、一生お世話になる。これが日本のロールモデルであったが、現代では終身雇用が崩壊した。しかし、日本人のマインドはまだ切り替わっていない。これを教育で変えていくことが、日本の未来にとって重要になる。それが、起業家と投資家の増加に繋がっていくと千葉氏は語る。

「起業家になれる可能性がある人たちは、起業へ真剣に興味の矛先を向け、自分で調べたり、話を聴きにいったりしてみてください。インターンに行くのもいいでしょう。いきなり大きなものに挑戦するのではなく、勉強代だと思ってまずは小さくやってみてください。起業家も投資家も、とにかく最初の一歩を踏み出すことが重要です」

資本主義社会で生き残る道は大きく2つ。大企業の傘下に入るか、そこに挑み続けるかだ。今後、日本で後者を選ぶ若い世代が増え、世界の発展に貢献するスタートアップが増えていくことを、心から期待したい。

文=戸村光 構成= 金二美香、鬼木杏梨

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