米SPACバブル崩壊が、日本企業にもたらしたチャンス
SPACは、2020〜2021年にアメリカで巨大なバブルを巻き起こし、2022年にはその崩壊が公式に発表された。CB Insightsのレポートによると、2020年のSPAC申請件数は246件で、調達額は730億米ドル。それが2021年には申請件数638件、調達額1430億米ドルとなり、大幅に増加した。しかし2022年には、ウォール街の白紙委任状ブームは崩壊の道をたどる。株式市場が低迷するなか、多くの有名SPACは合併のターゲット企業を見つけるために苦戦を強いられた。PitchBookのデータによると、過去2年間にSPACを通じて上場した企業の株式は、2022年現在、45%減少している。
SPACバブル崩壊の理由は2つあると、千葉氏は説明する。1つ目は、SPACのレギュレーションが厳しくなり、簡単に作れなくなったこと。2つ目は、世界的な株価の暴落だ。例えば2021年には平均1ビリオンオーバー、620あったSPACに対して、合併のターゲット企業の株価が一気に下がってしまったため、SPACは求める相手を失ってしまった。そして多くの投資銀行が、「SPACの時代は終わった」という声明文を発表した。
しかし、千葉氏はこの動きをチャンスだと見ている。
「我々みたいな草の根スタートアップにとっては大きなチャンスで、巨人がいなくなったことで、急に見渡しが良くなっています。逆境を糧に、現在はPONO Capital3号、4号とどんどん新規のSPACをリリースしていて、日本からSPAC上場するにはちょうど良いサイズです」
日本では上場が困難なディープテックのスタートアップでも、SPACであれば米国で上場の可能性がある。エクイティのサイズで見ると、NASDAQは東証の約5倍にもなる。つまりNASDAQでは合併先の候補となり得る企業数がバブル時より減ったものの、単純計算で上場企業、投資家の数が東証の何倍も多いことになる。
NASDAQは裾野が広く、実際に空飛ぶ車だけでも6社ほど上場しているが、日本市場では未だゼロ。NASDAQで狭いディープテックの各分野に上場企業がいることは、IPOでいうところのコンプス(類似企業)が存在することになるため、バリュエーションがつけられる。これが、NASDAQと東証との大きな違いだ。
千葉氏は今後、SPACを通じてNASDAQ上場を希望する日本企業が増えると予測している。
「我々PONO Capitalが日本で探しているスタートアップの要件は、時価総額が最低300億円以上で、テクノロジーを持っていること。条件を満たす日本のスタートアップは、100社ないぐらいです。その中の多くの会社からお話をいただいているので、ニーズをすごく感じています」