「市場には不吉な兆候がある」とミスラフ・マテイカ率いるJPモルガンのアナリストは、2月20日のメモで述べ、直近の市場の上昇が3月末まで衰え続け、今四半期が今年の株式市場のピークになる可能性を示す多くの警告サインが灯ったと指摘した。
その1つはイールドカーブが「大きく逆転」したままであることだ。米国が景気後退を回避できるという楽観的な見方が増えているにもかかわらず、過去50年間のすべての米国の不況に先行したイールドカーブの逆転が、1980年代以降で最も強まっているとJPモルガンは指摘し「このような状況下で不況を回避できた例はない」と述べた。
さらに、米国のマネーサプライは3月から急激に減少し、2006年以降で初めて年間ベースでマイナスとなった。銀行が融資基準を厳しくし始めたことで、過去の不況に先行して見られた借入れ需要の急減が起きている。
「もう手遅れだ」とJPモルガンのマテイカは指摘し、FRBが過去1年間に行った積極的な利上げが経済全体に波及するには最長で2年がかかると述べ、この先のさらなる打撃を警告した。
所得に占める住宅ローンの割合は13%から26%へと倍増し、貯蓄率はほぼゼロになった。しかし、マテイカは、FRBが今年中に少なくともあと2回の利上げを行うと予想し「FRBが利上げをやめる前に株価がサイクルの底を打ったことはない」と指摘した。
一方、弱気な見方が根強い中で、もっと楽観的な意見もある。ヤン・ハツィウス率いるGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のエコノミストは先週、景気後退の確率を平均予測の65%を大幅に下回るわずか25%とした。これは、大幅な雇用統計の改善に見られる「労働市場の強さが続いている」ことと、企業が経済に対してより楽観的になっている初期の兆候を考慮した結果という。
政策金利は5.5%視野に
FRBは22日に米国連邦公開市場委員会(FOMC)の前回会合の議事要旨を発表する予定だ。Federal Reserve Bank of Cleveland(クリーブランド連邦準備銀行)のメスター総裁は先週、0.25ポイントの利上げを決定した前回のFOMCについて「経済の状況を踏まえると、0.5ポイントの利上げが適切との見方に説得力があった」と述べた。メスター総裁は、昨年夏以降のインフレ率の緩和を歓迎しながらも「まだ高すぎる」と警告した。個人消費の底堅さとサプライチェーンの混乱の中で、米国のインフレ率は昨年6月に9.1%と40年ぶりの高水準に急騰し、FRBは金利の引き上げを余儀なくされた。専門家は、利上げが景気を減速させ、不必要な景気後退を招く恐れがあると主張してきたが、インフレは予想以上に長引き、再び上昇する可能性も指摘されている。セブンスレポートのストラテジストのトム・エッセイは20日のメモで「市場はFRBがまだ利上げの終了に近づいていないことを認めている」と書いた。
FRBがいつ利上げをやめるかは不明だが、ゴールドマンとBank of America(バンク・オブ・アメリカ)のアナリストは、先週の予想以上に高いインフレ率を受け、さらなる利上げを予想した。彼らは、FRBが最大で5.5%まで政策金利を引き上げ、20年以上ぶりの高水準に達する可能性があると予想した。
(forbes.com 原文)