点鼻スプレーで片頭痛治療 ファイザーの「画期的」新薬が治験完了

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米ファイザーは、片頭痛治療の新薬「ザベジェパント」について、臨床試験の最終段階にあたる「第3相治験」で良好な結果が得られたと発表した。米食品医薬品局(FDA)による審査も近く完了する見込みだ。片頭痛を引き起こす物質「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」の受容体結合を阻害する薬で、承認されれば鼻腔内に噴霧するタイプとしては米国初となる。

治験結果は医学誌「Lancet Neurology」に発表され、査読も受けている。ファイザーは16日の発表文で「片頭痛の急性治療での有効性」が確認されたと述べている。

治験では、月に複数回、片頭痛に襲われている1405人を対象に、痛みなどの症状に対するザベジェパントの効能を評価した。被験者の半数に鼻腔内噴霧で薬を単回投与し、残り半数にプラセボ(偽薬)を投与した。すると2時間後の段階で、ザベジェパントはプラセボに比べ痛みの緩和効果が高いという結果が得られた。

また、吐き気や光過敏、音過敏など、患者を悩ませるほかの症状の大半に関しても、ザベジェパントのほうが効果的だった。FDAは、片頭痛治療薬の試験ではこうした症状についても評価するよう勧告している。

ザベジェパントはこのほか、投与15分後の痛み緩和や、投与後2〜48時間の緩和持続などでもプラセボより良好な結果だった。

ファイザーによると、薬を投与された人が副作用に耐えられる程度をさす「忍容性」も高く、重篤な副作用も報告されなかった。主な副作用は味覚の変化、鼻の不快感、吐き気などだったという。

ザベジェパントは、ファイザーが昨年116億ドル(現在の為替レートで約1兆5600億円)で買収した米バイオヘイブンが開発した薬で、バイオヘイブンが昨年5月、成人の急性片頭痛薬として審査をFDAに申請していた。FDAは3月末までに審査を終える見通しとなっている。

承認されれば、米国初の点鼻タイプのCGRP受容体拮抗薬となる。英調査会社のグローバルデータによると、片頭痛薬は世界全体で46億ドル(約6200億円)の市場規模がある。ザベジェパントが登場すれば、競合する薬に対して優位に立てそうだ。

正確な数は不明だが、片頭痛は10人に1人が経験しているとも言われ、世界各地で健康障害の原因の上位に入ることも多い。また、発症が女性に偏っていることも知られている。全米頭痛財団によると米国でも約4000万人が悩まされており、うち7割は女性とされる。

ファイザーのジェームズ・ラスナク上級副社長兼最高開発責任者はザベジェパントについて、「片頭痛の患者、とくに緩和の効き目がすぐに出てほしいと切望している人や、従来と異なる投与方法でメリットを得られる人にとって、治療の新しい重要な選択肢になる可能性を秘めている」と説明。「近々、片頭痛に悩まされている大勢の米国人に、医学の新たな画期的成果を届けることができそうだ」と述べている。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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