坂本:昨年Netflixは会員数減少が大きく報じられたが、我々の感覚としては、特に昨今、世界各地でコロナが収束に向かうと同時に、急激に加速した成長スピードがダウンしたのではなく、緩やかになったというのが正直なところ。
我々はやっぱり全世界的に作品を手がけるスタジオなので、コロナが流行ったときに日本の作品にとどまらず、全世界で映画、ドラマシリーズ、バラエティ、アニメ、ドキュメンタリーも含めてかなりの作品数を制作、配信し続けることができたのはよかったと思っている。国境を越えられるというインターネットの恩恵は大きなメリットだ。
藤田:日本のメディアはどうしても国内にばかり目が行きがちだ。対象人口をもっと大きくして、利用者の「桁」を変えたいという思いが常にベースにある。戦争によりサプライチェーンへの影響が出るなどグローバリゼーションが停滞しているとも言われているが、映像コンテンツに関してはまったく関係ない。利用者がその場で見るし、その場で課金する。そういう意味でも世界で通用するものを作れる会社にならないと、生き残れないなというのは常に考えている。
坂本:我々が190カ国に向けて配信するというプロセスは、企画立案からローカライズで多言語の字幕をつけるところまで含めると、非常に手間がかかっている。作品一つひとつを丁寧に仕上げて世界でヒットを狙うという意味でそこは欠かせない部分だ。直近では「First Love 初恋」や「今際の国のアリス」というグローバルなヒット作も残すことができたので、次は、ヒットを継続して作っていけるかというところに尽きる。
皆さんがまだ見たことないもの、絶対見るべきものっていうところに向き合えるかが試される。その戦略のひとつとして、バラエティというジャンルでアクセルを踏んでいく。
藤田:編成が決まっている番組制作では、完成度よりもオンエアに間に合うようにしなくてはならないので、どうしても最終クオリティよりも納期を優先せざるを得ない。それだともう視聴者が許してくれませんから、ネットではそこを変えたいとずっと思ってきた。
ABEMA開局からちょうど10年目になる2026年には、サイバーエージェントの会長になると伝えている。ABEMAは年々赤字幅も縮小して軌道に乗ってきており、あと3年で収益面でも目処が立ったと言えるところまで持っていけると踏んでいる。