宮本流投資術 「全ての起業家にフェア」な対応を
エンジェル投資家の中には、前述の通り推し活のようにその起業家が好きだからという理由で投資を決断する人も少なくはない。一方で宮本氏は2010年の4月より約14社に投資した実績を持つが、出会った投資先候補の企業は延べ360社に上り、かなり慎重な投資判断をしていることが伺える。宮本氏の投資基準の軸は、あくまで経済的リターンが十分に得られるかどうかにある。90分の投資面談で、それを判断しているという。具体的な基準は以下の通りだ。
1. 社長の人柄
パッション・熱狂、視座の高さ、アイデア、ビジョン、専門性、可愛げ、チームワーク、マネジメント力。これらの項目で社長の人柄を見極め、上場する覚悟はあるのか、どれほどまで諦めずに挑戦しつづけられるかを判断する。2.事業の可能性
市場、スケーラビリティ、参入タイミング、マーケットフィット。1.の人柄評価と、それに紐づく事業成長の可能性を総合評価することで、投資の意思決定を行う。また、筆者も複数の起業家を宮本氏に紹介しているが、宮本氏は投資を断った起業家にも丁寧なフィードバックを添え、ラブレターを送っている。投資家として、起業家にどこまでフェアな会話ができるのか、また、投資の有無に関わらず丁寧なコミュニケーションで締め括れるか。そうしたことが、エンジェル投資家になるためには必要な素質だといえるだろう。
米国最高峰のベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツや、アクセラレーターのYコンビネータ投資チームは、エグジット経験のある起業家で構成されている。米国では投資家の数が増え、起業家も投資家を選ぶ立場にある。投資家には充実した支援はもちろん、エグジットの可能性を引き上げることが求められており、起業の経験がなければ、起業家からの信頼を得ることが困難だ。
宮本氏を筆頭に、今後、日本でも実業経験のあるエンジェル投資家が増えることで、スタートアップの循環型エコシステムがより活性化することを願ってやまない。
※ 第 2 回経済財政諮問会議(平成 26 年 2 月 20 日)資料 より