「顧みられない熱帯病」米国の貧困地域で感染が増加

Smith Collection/Gado/Getty Images

NTDに関する世界有数の権威であるホッテズは、もはやNTDは米国では珍しい病気ではなく「一般的だが、たいていは極貧生活を送る米国人しかかからないため、診断も治療も予防もほとんどされていない」のが現状だと指摘する。

テキサス州やメキシコ湾岸地域でよく見られる感染症は、肺外結核や潜在性結核感染症、糞線虫症、シャーガス病、住血吸虫症などで、認知度が低いため過少診断されがちだ。たとえば、糞線虫はメキシコ湾岸やアパラチアをはじめ米国の多くの地域に生息しているが、風土病である糞線虫症の血清有病率調査やスクリーニング検査については、全国的なものはおろか、地域を対象とした大規模なものすらガイドラインが存在しない。

適切な全国的疾病発生動向調査が行われていない問題は、ブッカーの提出した法案でも扱われている。同議員は法案発表にあたり「極度の貧困状態にある人々は、地域社会に適切な資源がないため、根絶されたと多くの人が考える病気に苦しんでいる。関心を高め、研究やモニタリングへの投資を増やして、この課題に対処する必要がある」と訴えた。

「顧みられない貧困病STOP(研究・治療・観察・予防)法案」では、以下の対策を講じるとしている。

・「顧みられない貧困病」の予防・診断・治療について、保健福祉長官と連邦議会に勧告するタスクフォースの創設
・有病率と分布の測定に役立つ公衆衛生監視システムを導入するための州予算と、予防・診断・治療を支える連邦認定保健センター予算の確保
・「顧みられない貧困病」の危険因子や症状などへの認知向上のため、医療従事者と一般市民を対象とした教育プログラムの開発・実施を保健福祉長官に要請
・新しい安価な診断ツールと治療法の開発につながる研究の促進

「顧みられない貧困病」は、すでに健康格差や経済格差を感じている人々に影響し、極度の貧困状態で暮らす人々を悪循環の中に閉じ込めてしまう。ブッカーの法案は、この長年の問題に取り組むため行動を起こすよう呼びかけている。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事