このプロジェクト発足のきっかけともなった、新潟県燕三条エリアを本拠に世界ブランドに成長したスノーピーク。今回、審査員として参加した同社代表・山井太に本誌編集長の藤吉雅春が総括を求めた。そこで飛び出した「マニア資本主義」という言葉の真意とは?
──「第二のスノーピークを探せ」を目標に始めたスモール・ジャイアンツ アワードは今回で6回目を迎えました。
この特集で紹介した受賞企業7社のストーリーはまるでオムニバス映画を観ているようで、世界を舞台に活躍している小さな会社がこんなにもあるのかと感銘を受けました。審査員として参加された印象は?
山井:ファイナリストは7社とも、それぞれにまったく違う個性があって、日本の中小企業の多様性を感じました。特に印象的だったのは、グランプリの筑水キャニコムと「防虫商社」の環境機器でしょうか。
アワードで行われた各社のピッチでも、「ものづくりは演歌だ」という文字の入ったTシャツ姿で、シャレの効いた製品名を発表するごとに審査員や会場を笑わせていた包行(良光)さんと、頭脳も経営手腕もクレバーで冷静沈着な片山(淳一郎)さんは、対照的で面白かったですね。
みんな後継ぎとしてしっかり事業をしながら、グローバルに活躍している企業ばかりでしたが、包行さんのように笑いをとりながらお客さんとのコミュニケーションが取れる会社はすごくめずらしいと思う。
スノーピークはずっとブランディングにこだわってきた会社ですが、キャニコム流のブランドづくりには意表をつかれました。
──スノーピークはブランディングについて、特にどの部分に注力されてきたのでしょうか。
山井:スノーピークは真面目でオーソドックスな会社ですから、いい商品をつくって、店頭でキャンパーに機能や使い方を丁寧に説明する、そしてユーザーの間にコミュニティが生まれるようにするという地道な3段階を続けてきました。
会社や製品の魅力を伝える方法も、こだわっているものづくりの工程を説明して見せるなど、あくまで真面目を貫いている。
そんな僕から見ると、筑水キャニコムの笑顔が絶えないコミュニケーションは、非常に洗練されていると感じた。製品名で笑わせるきっかけをつくるという、計算された高度なものであると感じました。
──ブランディングもそうですが、それぞれが独自の販売の仕組みをつくり上げていることも、今回の受賞企業に共通する点なのかなと感じました。
山井:企業にとってもっとも大事なことは、営業の仕方です。営業力と販売力で大きな差がついてしまう。