リーダーが重要な政治的問題について意見を表明することを期待する傾向は、従業員のみならず、求職者の間でも高まっている。最高経営責任者(CEO)がさまざまな政治的問題(特に会社の中核事業に関係ない問題)に対して人間主義的な態度を示した場合、求職者がその会社で働きたいと考える可能性は約20%上昇した。
この傾向は、求職者の政治的志向や年齢、教育水準、性別に関係なくみられた。さらにCEOと自分の見解が一致しなくとも、その会社で働く意欲は高まる傾向にあった。
調査を行った研究チームは「理念を持ち、政治に積極的な経営者が人気を集めることは予想していたが、自分と意見が一致していない経営者も人気を集めていたことは驚きだった」と説明。「従業員は自分の意見にかかわらず、CEOにはよりリベラルで人間主義的な姿勢を求めている。CEOの理念は、現代の雇用市場でますます重要になっているようだ」と指摘した。
意見の表明
自分の意見を表明することは難しいことも多い。そのトピックが、世論を二分するようなものであればなおさらだ。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の研究チームは、こうしたリスクがあるにもかかわらず人々が意見を表明しようと思う動機を調べた。研究チームは「論理的根拠」に焦点を当てた。論理的根拠は、特定の話題に関する意見を裏づけるために使われるストーリーであり、自分の意見の良い点を他者に納得してもらうためや、一般には受け入れ難い意見を少しでも受け入れやすくするために使われる。研究チームによると、論理的根拠は、人が通常心の中に秘めている意見を共有しようと思う上で大きな役割を果たし、聞き手がこうした意見をどう解釈するかにも影響を与える。
例えば、黒人への暴行などで批判される米警察から予算を取り上げることを求める「デファンド・ザ・ポリス」運動について、反対意見をツイッターに投稿していたリベラル派は、最初にその意見を裏づける科学的証拠があることを示す記事などを読んだとツイートで示した場合、自分の意見をより積極的に発信する傾向にあり、周囲から偏見のある人物とみられたり、社会的な制裁を受けたりする割合も低かった。