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2023.03.03

DXで切り拓く、新たな物流ソリューション~SGホールディングスグループが描く未来

佐川急便を中核に、多彩なソリューションを提供している総合物流企業グループ・SGホールディングスグループ。

現在、同社グループは、2030年に向けた長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。」を掲げている。さらに2022年度から始まった中期3カ年計画「SGH Story 2024」では、重点戦略のひとつに「DXへの投資による競争優位の創出」を置いた。

1980年代から業界に先駆けてIT投資を進めてきた同社グループがいまふたたびDX戦略に重きを置き、生み出そうとしている新たな物流ソリューションとは? 取締役 経営企画担当 川中子勝浩に聞いた。


「佐川急便」の宅配便をコアとしたデリバリー事業を筆頭に、ロジスティクス、不動産、ITなどの事業も手がけている総合物流企業グループが、SGホールディングスグループ(以下、SGHグループ)だ。

SGHグループは、「Windows95」の登場よりさかのぼること10年、1985年から業界に先駆けた積極的なIT投資を行い、貨物追跡システムや代金引換サービス「e-コレクト®️」を開発してきたデジタル先進企業グループである。

2005年には各種ベンダーに委託開発していたメインフレーム(基幹システム)から、オープン化された共通プラットフォーム「SGHプラットフォーム」へ移行し、業界に先駆けてダウンサイジングに取り組んだ。各種業務ごとに独立していたシステムを統合することで、システム開発コストの低減やデータの一元管理も可能な環境を整備した。

また、並行してIT人材の育成による、開発・保守・運用の内製化にも着手した。これは経済産業省「DXレポート」(2018年)で指摘された「2025年の崖(基幹システムの老朽化などを含む各種デジタル問題)」を早期にクリア済みということだ。

詳細は後述するが、SGHグループの積極的なDX(IT化)の取り組みは、経済産業省と東京証券取引所などが認定する「DX銘柄」に2年連続(2021、2022年度)で選定されるなど、高い評価を受けている。

そんなDX優等生とも言うべきSGHグループだが、中期3カ年計画「SGH Story 2024」(2022年発表)では、DXをあらためて重点戦略のひとつに掲げている。

川中子勝浩 SGホールディングス 取締役 経営企画担当

DX先進企業があらためてDXを重点戦略に位置づけた理由

DXを重点戦略のひとつに掲げた真意とDXの現状について、川中子は語る。

「『SGH Story 2024』を策定した背景には、新型コロナウイルス感染症の蔓延により社会・経済活動が一変し、DXに取り組む重要性がさらに加速したことがあります。また2021年度に9カ年計画の経営目標を前倒しで達成したこともあり、 このような激しい変化の時代でも、持続的成長を実現するために、私たちはいま一度経営戦略を見つめ直し、新たな長期ビジョンを掲げ、それを達成するために『SGH Story 2024』を策定しました。そこで成長エンジンとして、重点戦略のひとつに位置づけたのがDXです」

SGHグループの売上構成は現状、デリバリー事業が約7割。しかし2030年には、売上比率を宅配便半分、その他事業半分のバランスに改革したいと、川中子は言う。

その目的は、総合物流企業グループから、“社会課題解決企業グループ”へとさらに進化すること。ではその実現のために、なぜDXが重視されているのだろうか。

「ひとつの事例を挙げますと、例えば、佐川急便が扱う年間約14億個の荷物は、大きさも、行先も、運び方も違います。つまり一個ずつ原価が違うのです。そのすべての原価を把握するのは、非常に困難です。

しかしバラバラに管理されていたサプライチェーン各々のデータを統合し、一元管理を可能にしたSGHプラットフォームは、エリア、積載率、人件費、車両費などをもとに、原価を明確に算出することを可能にしました。

その数字をもとに算出した適正運賃に則して、2013年から丁寧に顧客交渉を重ねた結果、収益構造を大きく改善しました」

この取り組みは、いまで言うならデータドリブン経営だ。経営目標の前倒しにもつながったDX(IT化)が、目標達成や課題解決につながることは知っている。ならば今回もまた「私たちの得意分野のDXで課題を解決し、経営目標を達成しよう」と考えるのは、SGHグループにとって自然なことだった。

「ほかにも、私たちを取り巻く外部環境には、働き方改革による物流業界の2024年問題(トラックドライバーの時間外労働時間の上限設定)や、人口減少・少子化、環境対応などの社会課題があります。その社会課題解決のためにも、あらためてDXの力を活用しようと思ったのです」

それでは具体的に、SGHグループが進めているDX戦略、3つの施策(①サービスの強化②業務の効率化③デジタル基盤の進化)について、見ていこう。

DX戦略、3本の柱 ①サービスの強化

「2024年問題や人口減少は、将来のトラックドライバー不足による業務破綻に直結します。その一方で、現在の国内トラック運送の積載率は平均40%以下。つまり運ぶ能力自体はあるのに、活用されていないのです。私たちは、その需要・供給を適切にマッチングさせることで、社会課題を解決できないかと考えています」

現在SGHグループが開発を目指しているのは、「TMS(Transportation Management System)プラットフォーム」だ。SGHグループは、すでに法人顧客向けに宅配便では運べない大型・特殊貨物の輸送や共同配送など、あらゆる「運ぶ」を総合的にプロデュースする「TMS」というサービスを提供しているが、荷主と配送協力会社のデータ連携をより進化させることで、より効率的な「運ぶ」を実現できると考えたのだ。

「現状、配送協力会社の貸切運行では、一般的には“行き”のみに荷物を積載し、帰りのトラックの荷台は空で運行しています。しかし、豊富な荷主からの配送依頼に関する情報(荷量・配送先)と、車両の種類・サイズと配送経路(空荷で走る帰りルート)を適切にマッチングさせることができれば、トラックは往路復路の両方で荷物を載せることができるのです。理論上は、ドライバーの人員数が半減しても、配送量を維持できる計算になります。

現状よりも配送コスト自体を下げることも可能になり、往復を配送に使えることで、運送事業者の扱う荷物も倍になる。結果、ドライバーの収入向上にもつながると考えています」

サービス面では他に、デリバリーやロジスティクスはもとより、IT、決済などグループ横断型でさまざまな機能を融合させて、顧客企業の経営課題を、物流ソリューションにより解決へと導く先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL®️(Go Advanced Logistics)による物流提案を行っている。より高度化する顧客ニーズに応えるため「GOAL®️プラットフォーム」の拡充も目指している。

「例えば私たちが現在構想しているGOAL®️プラットフォームは、業種・業態を問わず、社外の契約倉庫を含む倉庫スペースの空き情報と、輸送工程のデータを組み合わせることで、物流面・コスト面ともに最適化した解決策をお客さまに提案することを目指しています。さらに当社グループが持つIT、決済、人材などのあらゆるリソースを加え、進化させていくことも視野に入れて取り組んでいます」

もちろんそのソリューション提供範囲は、グローバルも含まれる。

「コロナ禍の影響もあり、越境ECの需要は、劇的なスピードで増加しています。越境ECに関わる企業とAPI連携することで、国際物流においてもワンストップのサービスを展開できるよう、現在開発を進めているところです」

DX戦略、3本の柱 ②業務の効率化

物流のスピードを加速し、トップギアまで上げるためには、オフィス内・倉庫内業務の効率化も欠かせない。先んじたDX(IT化)を進めてきたSGHグループだが、業務の効率化の面では、長い間、配送情報のフルデジタル化という課題があったと、川中子は回想する。

「お客さまからお預かりする手書きの伝票について、すでに2019年には、共同開発したAI-OCRを活用し、請求業務に必要な重量とサイズの入力作業の自動化は可能となっていました。年間約14億個の荷物の取り扱いがある佐川急便では、繁忙期には1日に100万枚もの配送伝票に記載された重量・サイズを人の手によりシステムに入力していたため、その作業時間(月間約8,400時間)を短縮できました。

顧客とのデータ連携により、約9割の配送情報のデジタル化は実現していましたが、残り1割の手書き伝票がフルデジタル化への課題でした。私たちはこの共同開発したAI-OCRを進化させることで、手書きの日本語を高精度に読み取ることについに成功。2022年4月には、宛名を含めた手書き伝票すべての情報を自動入力による、配送情報のフルデジタル化を実現したのです」

すべての配送情報をデータ化できたことで、配送順や輸送経路を効率的に組むことができるシステムと連携し、AIによる最適な配送ルート設定もさらに効率化された。これにより、ドライバーの経験年数を問わず、安定して効率的な配送ルートで業務を行うことができるようになった。これからは、この情報をもとにさらなる効率化に取り組んでいくと語る。

一方、倉庫内業務についてはロボティクスなどを鍵に、効率化を実現している。

「倉庫内作業では、自動搬送ロボットの活用は欠かせません。しかし現状のロボットでは、搬送できる荷物の形状はロボットの仕様ごとに限定されています。そこで現在、パートナー企業と連携し、2つのロボットで挟み込むことでさまざまな形状の荷物に対応する搬送ロボットの開発にも取り組んでいます」

DX戦略、3本の柱 ③デジタル基盤の進化

デジタル基盤を進化させるために、SGHグループでは2018年から、現場とエンジニアが共同でアジャイル開発に取り組んでいる。試行錯誤を繰り返しながら複数のプロジェクトを並走し、すでにいくつかは現場従業員が使用する端末に実装され、業務効率化やセールスドライバー®️の営業支援に役立っていると川中子は説明する。

「当社グループのアジャイル開発体制では、グループ会社のSGシステムが現場と共同で開発を進める体制のため、現場からの改善要望が直接開発者のもとに届きます。実務に基づいた改善を実現することで、感謝の声もダイレクトに届き、開発者のモチベーションは向上する。それが、さらによりよい開発へとつながり、そしてまた現場から感謝の声が届く。開発規模だけではない環境に魅力を感じ、自然と意欲も高く、優秀な人材が集まってくる。それにより、さらにデジタル基盤の進化が進む……という好循環を生み出せています」

なお、SGシステムでは、全社員向けの各種IT教育の強化に加え、専門的な知識や技術が適切に評価されるエンジニア向けの評価制度を整えている。AIエンジニア、ロボットエンジニア、データサイエンティストなど、学生・経験者とも、優秀なデジタル人材の獲得・育成を推進できているという。

 

社会課題の解決に向け、オープンイノベーションにも取り組む

DX戦略、3本の柱を推進するSGHグループ。川中子は、それに加え、2022年度にグループ全体の取り組みに進化させたオープンイノベーションにも言及した。

「2020年から佐川急便でスタートアップ企業等との共創を目指すオープンイノベーションプログラムを始めました。2022年からはSGHグループ全体で取り組んでいます。

長期ビジョン『Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。』にも掲げているように、さまざまな業種・業界の枠を超える多様なパートナーとともに、社会課題の解決にもつながる新たな価値を生み出していくことを目指しています」

コロナ禍を経て、DXが加速し、世界は狭くなったと言われる。しかしどんなにデジタルで人がつながったとしても、リアルな荷物の流れはなくならない。それはこの先も減ることはないだろう。最後に川中子は、SGHグループとしての決意を口にした。

「長期ビジョンの実現に向けて、あらゆる経営資源を有効活用し、競争優位性を創り、向上させていくための成長エンジンとしてDXをこれまで以上に、より一層推進していきます。お客さまの経営課題と社会課題を解決し、信頼され、選ばれる企業グループであり続けるために、新しい物流を創造していきたいと考えています」


川中子勝浩(かわなご・かつひろ)◎金融業界を経て2006年にSGホールディングスに入社。2013年に佐川急便の執行役員、2016年に取締役就任。2019年にSGホールディングスの取締役 経営企画担当に就任。SG HOLDINGS GLOBAL PTE. LTD、SGHグローバル・ジャパン、SGリアルティの取締役も兼務している。

text by Ryoichi Shimizu/photographs by Shuji Goto/ edit by Akio Takashiro

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