本人同士が同意した関係だとはいえ、不適切な関係を暴露されたことを理由に職を失った著名人は、トーリー、ホームズ、ロバックだけではない。2022年には、CNNの前社長ジェフ・ザッカーが、幹部社員との交際が発覚して同局を辞めた。
プリンストン大学は、古典学の教授だったジョシュ・カッツを、合意の上での交際を理由に解雇した。そして、マクドナルドの元CEOであるスティーブ・イースターブルックは、自社従業員と合意の上の関係を持ち、それを隠していたとして、2023年1月に40万ドル(約5360万円)の罰金を科された(イースターブルックは、同じ関係を理由に、2019年に解雇されている)。
これらの関係の共通点は、周囲には秘密にされていたことだ。米国人材マネジメント協会(SHRM)の調査から、職場恋愛をしたことがある人のうち、実に82%が、そのことを雇用主に報告していないことが明らかになっている。仕事関係の友人に対しては、雇用主よりは打ち明けやすいが、同僚に打ち明けている人も半数以下しかいない。
このように秘密主義になる主な理由の1つに、職場恋愛をしている従業員がその事実を報告しようとするインセンティブを、会社側がほとんど与えていないことがある。SHRMの調査によると、米国の労働者のほぼ4分の3は「自分の雇用主は従業員に対して、交際相手や恋愛関係を明らかにすることを求めていない」と答えている。雇用主が知りたがらないのであれば、開示するインセンティブはほとんどない。そして多くの場合、組織側は開示しやすい環境を作っていない。気まずい対面での会話や、人事部への電話連絡以外の方法を提供していないのだ。
職場恋愛はえこひいき、ハラスメント、攻撃、報復などを引き起こす可能性があるため、組織はこうした関係を監視できるよう、報告への強いインセンティブを用意すべきだ。