政治

2023.02.22

ロシア軍の戦車は数年で枯渇か 残された最終手段とは

Getty Images

ロシアの軍需産業界はここ1年ほどの間に1970年代に生産された旧式のT-62を数百両修理した。これらの戦車がその場しのぎ的なものだったことは明らかだが、それでも戦況に対して一つの特筆すべき貢献をした。ウクライナ軍がこれらの戦車を奪取し、工兵車に改造しているのだ。

ウラルバゴンザボドとオムスクトランスマッシュは損失を補うために戦車の納入を早めることができるかもしれない。だがそのためには戦車性能を落とす必要があるし、長期的な増産は不可能だ。備蓄している無傷のT-72とT-80を使い果たした時、ロシアには4つの選択肢があるが、どれも良策ではない。

1つ目は、保管されている50年前のT-62を引っ張り出すことだ。だがT-62は前線に到着するやいなや奪取されるか破壊される傾向にあり、その投入は実際の解決策というよりも、解決策を用意したという建前をつくるものにすぎない。

2つ目は、巨額を投じた新型戦車の生産拡大だ。だがこれはリスクが高く、戦車を優先すると砲弾や巡航ミサイル、戦闘機などに予算を割けなくなる。ロシアが必要とする兵器は多岐にわたり、戦争が長期化する中でその需要は増えている。優先すべきなのは戦車だけではない。

3つ目は、理論上は可能であるものの、第2次世界大戦後のロシアではこれまでとうてい考えられない策だ。無人機や砲弾、ロケット弾のように、戦車も他国から輸入するというものだ。ちょうど、北朝鮮とイランがT-72の大幅改良タイプを生産している。

4つ目の選択肢はもちろん、軍部隊の武装を縮小し、戦車を配備する旅団の数と配備数を減らすことだ。だがその場合、突然戦車を失った部隊に戦い方の指針を示せるよう、数十年来の戦闘教義を見直す必要がある。

しかし、戦闘教義の柔軟性はロシアの強みではない。もし代替策が思考改革しかない状態に置かれたら、ロシアの軍幹部はそれでも改革を拒み、北朝鮮製の戦車で部隊を戦場に送ることを選ぶかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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