経済活動と企業の利他性の関連についてはどうだろう。フランスの経済学者・思想家のジャック・アタリは著書『命の経済~パンデミック後、新しい世界が始まる』(プレジデント社刊)で、「利他主義が今こそ大事である」と述べているし、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのナバ・アシュラフ教授らは、「利他的な活動は資産(「Altruistic Capital=利他的資本)になり得る」ことに関する調査研究で成果をあげ始めている。
そんななかForbes JAPAN Web編集部でも、企業の利他的な活動と生産性率、時価総額の間にはなんらかの連関があるのではないか、との仮説を立て、Forbes JAPAN "日本の起業家ランキングみずほ賞(2023年版)"にも選出された非財務データバンク「サステナブル・ラボ」にリサーチを依頼した。
──果たして日本企業についての調査で、「利他が資本主義を減速させる条件ではない」ことは定量的に示されたのか?
以下、結果のデータと考察を紹介し、Forbes JAPAN Web編集長 谷本 有香によるコメントを掲載する。
関連記事:『電通有志ボラ部』部長が気づいた「ビル・ゲイツが慈善活動をする理由」
調査にあたっての仮説
1.企業のボランティア施策(利他的文化)と労働生産性率には相関関係がある*労働生産性率=従業員当たりの売上総利益を参照
2.企業のボランティア施策(利他的文化)と企業価値には相関関係がある
*企業価値=PER&PBRを参照
調査・検証に使用したデータについて
東証プライム上場企業1091社、2022年(一部は2021年)の1.5万データポイントを分析。ニュースは過去5年を参照。結果からの考察
1. ボランティア活動におけるデータと労働生産性率の相関性は限定的だが、ボランティア活動にかぎらず、社会活動に範囲を広げるとより強い相関関係がある。2. 1.と同様の結果。
ボランティア活動を含めた社会活動を幅広く行っている企業は生産性・企業価値が高い傾向。社会活動の中でのボランティア活動も一定程度のポジティブ効果がある。