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2023.02.24

アルパカの抗体が新型コロナ重症化を抑制、新たな感染症にも対応可能か

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オミクロン株を含む新型コロナウイルスの変異株に高い中和性を示す新たな抗体を、京都大学をはじめとする研究グループが作り出しました。気道に1回投与するだけで、致死量の新型コロナウイルスを感染させたマウスの生存期間が延びたとのことです。この中和抗体の構造は、アルパカやサメの仲間だけが持つ特殊なもので、「アルパカ抗体」とも呼ばれています。

京都大学、横浜私立大学、東京大学、COGNANO(コグナノ)からなる研究グループは、新型コロナウイルス変異株に対して高い中和活性(ウイルスの感染、増殖を抑え、発症しにくくする性質)を持つナノボディ抗体、いわゆるアルパカ抗体のP17とP86を三量体化した「TP17」と「TP86」を作り出しました。三量体とは、3つの高分子が結合した複合体のことを言います。

新型コロナウイルスに感染しやすく増殖させやすいように遺伝子を改変したマウスに致死量の新型コロナウイルスを感染させた状態で、この2種類のナノボディ抗体を混ぜ合わせたものを気道に1回投与したところ、感染によって見られるはずの体重の減少が抑制され、生存期間が延びました。

研究グループはこれまで、ナノボディ抗体の二量化も行っていますが、二量化よりも三量化のほうが中和活性を向上できたといいます。また、ナノボディ抗体は遺伝工学的な改変がしやすく、人の身体の中で自然に生成されるヒト抗体よりも「数千倍安価」に生産できるとのこと。

京都大学大学院医科学研究科の高折晃史教授は、「今後、新たなCOVID-19(新型コロナウイルス)治療薬の開発につなげると同時に、本技術を新たな感染症治療に対応可能なパイプラインにしたい」と話しています。具体的には、エイズウイルス、ネコエイズウイルス、サル痘、がんの免疫などを明らかにしてゆくということです。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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