2022年9月に米国で始動したTemuは、衣類から電子機器、楽器に至るまでの幅広いアイテムを衝撃的な安さで販売している。
2月20日のプレジデントデーの休日を控えた週末のアプリ上では「最大90%オフ」の宣伝文句が踊り、10ドル(約1340円)以下のランニングシューズや6ドル(約810円)の電動工具セットなどが販売された。ボストンを拠点とする中国系小売業者であるTemuは、中国のEコマースプラットフォーム「ピンドォドォ(拼多多)」を運営するPDD Holdings Inc.が所有している。
Apple(アップル)のアプリストアで1位を獲得したTemuは、ソーシャルメディア上ではさまざまな著名人を起用した広告キャンペーンを展開し、TikTok(ティックトック)のハッシュタグ#temuは3億回以上も表示された。同社は、安さの秘密が「中間業者を排除したことにある」と述べている。ニュースサイトWiredは昨年10月の記事で、Temuが米国の倉庫ネットワークを使用せず、中国の業者がダイレクトにアメリカ人に商品を販売できる道を開いたと報じていた。
しかしこのアプリには苦情も多く、その多くが商品が届かないことや壊れた商品が届いたこと、カスタマーサービスの対応が遅いことなどを指摘している。
Temuは、2015年に始動した同様のビジネスモデルを持つEコマースサイトのピンドォドォのサプライチェーンを利用している。しかし、ピンドォドォにも同様の苦情や、コピー商品の問題が指摘され、2019年に米国通商代表部はこのアプリを「悪名高い市場」のリストに掲載した。
米国政府はここ数カ月、中国系アプリへの監視を強化し、一部の議員は国家安全保障やデータ保護に関する懸念から、TikTokをはじめとする中国系アプリの禁止を推進している。
一方、Temuの低価格と幅広い品揃えは、同じく中国発のファストファッション系アプリの「SHEIN(シーイン)」とも比較されるようになっている。調査会社Marketplace Pulseの創業者は「TemuとSHEIN は、変化の少ない米国のEコマース市場でディスラプションを起こした」と先日のワシントンポストの記事にコメントした。
2022年の売上高が1000億ドル(約13兆4000万円)に達したSHEINは、インフルエンサーを起用したマーケティングと価格の安さで、世界で最も知名度が高いアパレルブランドの1つになっている。しかし、同社は多くのファストファッション小売業者と同様に、商品の質の低さや劣悪な労働環境を批判され、使い捨ての衣類を大量生産することが環境問題につながるとの非難も浴びている。
さらに、SHEINでは、他社のデザインをコピーした服が売られていることも問題となっている。
(forbes.com 原文)