ビジネス

2023.02.23 14:00

「聴く力」の重要性、反論のためではなく理解するために聴くには

池田美樹
ダンカン このことはリーダーにはどのように当てはまるのでしょうか。

コヴィー 人は権威に従う傾向があるため、リーダーの立場になると、共感的傾聴はさらに難しくなります。そのため、多くのシニアリーダーが聴き上手ではなく、自分がいる間はほとんどしゃべってばかりになるのです。

カリフォルニア大学のダッカー・ケルナー教授は、「パワーパラドックス(力のパラドックス)」 という言葉を生み出しました。リーダーが共感や他者への貢献で影響力を得る一方で、それらを得るにつれてそのスキルを失ってしまうことをこう言います。 実際、出世すればするほど、リーダーは共感力を失っていく傾向があります。

もしあなたがリーダーの役割を担っているのなら、一度、直感的なチェックをしてみてください。次にチームの会議に出たとき、「今日、この会議で交わされた言葉のうち、何パーセントが自分の口から出た言葉だろうか」と自分に問いかけてみるのです。会議に6人出席していたのに、8割が自分から出た言葉だとしたら、それは問題です。

ダンカン:人と人との真のつながりには「共感」が欠かせません。メールやショートメッセージはそれにどのような影響を与えたのでしょうか。また、時間を有効に使いながら人間関係を円滑に保つためには、どのようにバランスをとればよいのでしょうか。

コヴィー:メールやショートメッセージは、手早く簡単なことを伝えるには便利で効率的ですが、感情が高ぶっているときにはうまくいきません。

私のチームでも同じようなことがありました。誰かが怒って、辛辣なメールを送ります。相手は反論を送り返します。それによって言い争いとなっていきます。そして彼らは他人を巻き込み始め…さらに多くの人が巻き込まれて行きます。そこで私は、「頼むから、電話で直接話し合ってくれ」と言いました。

テクノロジーを使うことで、共感するために不可欠な声のトーンや表情が失われてしまうのです。ですから、重要で感情的な問題に対処するときには、メールやショートメッセージを送らないようにしましょう。どこかのタイミングで直接会うか、せめて電話で話し合うのです。絵文字だけでは不十分なのです。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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