安定的に稼働し、柔軟性が高く、温室効果ガスを排出しない小型モジュール式原子炉こそ、頼れるエネルギー源となるかもしれない。米政府が奨励策を講じ、金融機関や電力会社にとって魅力が増したことで、小型原子炉は存在感を強めている。米国各州政府や各国政府が導入を前向きに検討しており、成長の可能性は非常に大きい。
米原子力規制委員会(NRC)の元委員で法律事務所Pillsbury Winthrop Shaw Pittman(ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン)のパートナーであるジェフ・メリフィールドは今月10日、米国エネルギー協会(USEA)主催のバーチャル会議で、何らかの信頼性の高いベースロード電力は不可欠だと指摘。「原子力発電所は初期費用がかかるが、80年間稼働する資産だ。風力や太陽光の場合、寿命は一般的に20年で、電池は約8年しかもたない。再生可能エネルギーや電池と比較して、原子力は非常に優れている」と述べた。
すでに、原発のないアイダホ州、ワイオミング州、ウェストバージニア州が小型モジュール炉の開発を認める法案を策定済みだという。欧州は海外に目を向け、アフリカではガーナとケニアが有望視されている。
小型モジュール炉の出力は1基当たり50~300メガワットだが、モジュールを組み合わせれば1000メガワットの発電所も作れる。モジュールの1つが故障しても、残りのモジュールが稼働している間に修復可能だ。こうしたユニットには通常、核廃棄物貯蔵格納装置が付属しているほか、水資源の乏しい国で飲料水の供給源になり得るなどの利点がある。
TerraPower(テラパワー)とGE日立・ニュクリア・エナジー(GEH)は2020年9月、いわゆる「ナトリウム」プロジェクトを開始した。これは2030年までに商業化を目指す小型モジュール炉で、現在Berkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイ)傘下のPacifiCorp(パシフィコープ)と共同で技術試験を行っている。ナトリウム原子炉は風力発電と太陽光発電を強化できるとされ、クリーンなバックアップ電源になる。
エネルギー安全保障が起爆剤に
Fluor Corp.(フルーア)が筆頭株主のNuScale(ニュースケール)も、モジュール12個を組み合わせて924メガワットのユニットを構成できる小型原子炉をアイダホ州に2029年に建設予定だ。カナダ・オンタリオ州の州営電力Ontario Power Generation(オンタリオ・パワー・ジェネレーション)は、2024年末までに小型モジュール炉の建設を開始し、2028年に運転開始を見込んでいる。テネシー川流域開発公社(TVA)も同じ技術を用いて、2030年代前半に小型原発を稼働させる見通しだ。TVAのドン・モール執行副社長兼最高執行責任者(COO)はUSEAのウェブ会議で、二酸化炭素削減に取り組みつつ「手頃で信頼性が高く回復力のある、よりクリーンなエネルギーを確実に提供する」よう努めていると説明。「これぞ真のエネルギー安全保障と言えるだろう」として、小型モジュール炉と原発の重要性を強調した。