それは、4月1日に会長に代わる豊田章男現社長がずっと言ってきたポリシーから一変したからだ。
例えば、2020年の自工会の会議でも章男社長は「電気自動車化ばかりを急ぐべきではない」、「電気自動車開発よりもハイブリッド車のさらなる普及を優先する」と主張していた。5年以上前から「電気自動車ではなく、電動化(ハイブリッド、PHEV、燃料電池車、EVを含む)の開発を加速させるべき」とか、「EVを増やすだけではカーボンニュートラルは実現不可能」だと言ってきたのだ。
だから、佐藤氏の発言は180度の方向転換になる。1997年に初ハイブリッドのプリウス以来、26年間ずっとハイブリッド車優先戦略を守ってきたトヨタがついに本格的な変身を始める。佐藤次期社長の「EVファースト」のコメントは世界の自動車業界に大きな波紋を起こした。
多くの海外のメディアは気合を入れてこのビッグニューズを伝えたが、「しかし───」と佐藤氏は言い直した。「これは現在の戦略を大きく変えるものではなく、トヨタはカーボンニュートラルを目指すポリシーを掲げて、さまざまな技術開発に引き続き注力していく」ことを強調した。
では、海外では、このニュースはどう受け止められたか? 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「トヨタはEV作戦へのシフトを加速させる」と書いた。英国の有力誌「オートカー」は、「新社長のもとでEV優先の作戦を採用する」と伝えている。米誌「カー&ドライバー」は、「レクサスの社長がトヨタのEV優先改革プランのリーダーに抜擢される」と言っている。また電気自動車界の有力サイト「insideEVs」は、「トヨタ新CEOの最重要課題はEV戦略の再構築」と伝えている。