北米

2023.02.19

米国はTikTokを禁止できるのか? バイトダンスが取る対抗策とは

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オプション2 CFIUSの権限によるアプリの禁止もしくは売却強制

1975年に設立された対米外国投資委員会(CFIUS)は、1988年の日米貿易摩擦の最中の富士通による半導体企業フェアチャイルドの買収提案から生じた懸念を受けて成立した修正条項によって、その権限を拡大した。この修正条項は、今日では国防生産法第721条として知られ、大統領が国家の安全保障を脅かすとみなされる外国からの投資を阻止し、制限する権限を与えている。また、大統領の「行動および調査結果は、司法審査の対象とはならない」との規定もある。

バイトダンスは、2017年に米国企業が開発したティーン向けの口パクアプリ「Musical.ly」を買収し、TikTokと改称した。この買収が、大統領とCFIUSが721条に基づく権限を行使する上での根拠となっている。

CFIUSは2019年11月、バイトダンスによるMusical.ly買収が米国の国家安全保障にリスクをもたらすかどうかの調査を開始した。これを受け、TikTokは、米国人の個人データへの中国からのアクセスを遮断する大規模な取り組みを行ってきた。しかし、ポリティコが昨年12月に報じたところによると、国防総省や各情報機関はこうした対策が不十分だとし、TikTokの米国企業への売却を強制するようCFIUSに働き掛けている。

TikTokは、大統領の721条の行使に対し訴訟を起こすことも可能だが、大統領の行動が前述の「司法審査の対象とはならない」という規定で守られていることが、そのハードルとなる。

オバマ大統領は2012年、721条を行使し、ラルズという中国系製造会社に対し、米海軍の制限空域にある風力発電機建設プロジェクトからの撤退を命じたことがある。

同社は、大統領の命令が権限を超えた行為であるとして、訴えを起こした。しかし、連邦地裁のエイミー・バーマン・ジャクソン判事は、この大統領令に口をはさむのは裁判所の役割ではないと結論。この条項は「大統領に極めて広範な権限を与えている」として、ラルズの訴えを退けた。
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編集=上田裕資

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