キャリア

2023.03.12 17:00

仕事に役立つ「ボクシング思考」 徹底した逆算で世界一に

Getty Images

「商社マンボクサー」「働きながら世界をとった二刀流ボクサー」なんて呼び名がついたのは、日本チャンピオンとなってからだ。私はそれまで、いまいち成績が振るわない二流のボクサーだった。

中学時代の部活動で、喧嘩に負けたことで始めたボクシング。習志野高校、法政大学と、ボクシング強豪校に通い、そこそこの結果を残してきた。プロになってからも、名門の帝拳ジムから声がかかり、そのまま所属を決めた。

当時は漠然と「夢は世界チャンピオンになること」と掲げていたが、プロに入ってからは挫折の連続だった。

デビュー戦から5戦目まで連戦、戦勝で勝ち続けてきたが、プロ6戦目で敗北、8戦目でKO負け。世界王者となるような選手は多くが無敗で勝ち上がっている。もう後がない状況まで追い詰められ、あまりに情けない試合内容に「才能がない」「もうボクシングは辞めろ」と吐き捨てるように言われたこともあった。

仕事を始めたのもその時期だ。スランプを脱し、自分を芯から変えたいと商社に就職を決めた。その時も思い返してみれば漠然とした気持ちだったかもしれない。



しかし、それまで社会人経験のない私にとって、仕事とボクシングの両立というのは想像以上に険しい道のりだった。

一番苦労したのは「時間」だ。早朝に起きてランニング、昼に仕事、夜にジムでのトレーニング、プライベートに当てる時間はほとんどなくなった。あまりの過密なスケジュールに、ボクシングが疎かになり、仕事でミスを連発したり、悪循環に陥った。

そんな時にある仕事を任されたことで転機が訪れた。それは“納期のスケジュール管理 ”だ。納期の日までに、何をすればいいのか、逆算してスケジュールを組んでいく作業だった。

仕事をこなしていくうちに、今の自分に足りていないものは、まさにこの“逆算”だと気づいた。仕事終わり、すぐに1日のスケジュールを見直し、細かく新しいスケジュールを立ててみることにした。



実際に計画に沿って動いた時、今までの自分には無駄な時間が多かったことに気づいた。やるべきことを決めて動けば、今まで以上に自由な時間が増えた。
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文=木村悠

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