クレイ勇輝(以下、クレイ) 今日は佐藤善仁・一関市長にお話を伺うため、岩手県の一関市にお邪魔しています。
先月、記者会見で東京ガールズコレクション(TGC)のティーン世代向けのファッションイベント「TGC teen ICHINOSEKI 2023」が5月27日に開催されることが発表されました。いま、市政とあわせてその準備でお忙しい時期ではないですか?
佐藤善仁市長(以下、佐藤) 昨年の9月議会でTGC teen開催のための補正予算が可決されたんですが、実はそこから記者会見を行う1月23日まで、イベントは何月に開催するかということすらオープンにできなかったんです。ですから会見の日を起点にして様々なことが一気に動き始めています。
一関市総合体育館ユードームで行うTGC teenの企画・制作はW TOKYOさんにお願いをしています。我々は若い人だけでなく、お子さんやお父さんお母さん、それ以外の世代の皆さまに楽しんでいただける屋外の催しを、推進委員会を立ち上げて進めているところです。
まだ情報を公にできなかったころですが、TGC teenが一関に来ることを知った市議会議員が興奮気味に「本当かい⁉」と聞いてきたり、青年会議所の職員もソワソワしたりしていましたよ。さっそくどんなイベントにしようか腕まくりして“なにすんべ!”と楽しみにしています(笑)。
1月23日に行われた「TGC teen ICHINOSEKI 2023」記者会見
クレイ TGC teenとしては初めて地方創生プロジェクトを取り入れての開催になるそうですが、決まるまでにはどんな経緯があったのでしょうか。
佐藤 「いちのせきをまるごと応援し隊」という勝手連的な集まりがあるんです。都内にある一関出身の方が経営する飲食店の、お客さんの集まりなんですが、皆さん首都圏にお住いの方で一関出身の方はいないんじゃないでしょうか。
そのお店では時々、一関産の食材だけを使って料理を振る舞う日を設けているんです。貸し切りにして、食材の生産者も呼んで自分が作った野菜やお肉をプレゼンしたりする。普段そんな機会はないので生産者も慣れないんですが、そうすることで生産地と消費者の繋がりができて、とれたての食材を産直するような関係が生まれたりしていたんです。
この「応援し隊」に、W TOKYOの村上範義社長と知り合いという方がいました。私は、市長に就任してから力を入れてきた政策に、人口減少対策や女性活躍のための環境づくりを掲げていたのですが、その方が「若者や女性にアピールしたいのなら東京ガールズコレクションでしょう」という話になりましてね。私もすぐに飛びつきました。それで村上社長をご紹介いただいたんです。
クレイ TGC teen開催には市として1億800万円の補正予算が組まれていますね。800万円は市の財政調整基金、1億円はヘルメットメーカーのSHOEIさんが企業版ふるさと納税制度を利用した寄附金です。SHOEIさんには市長が直接プレゼンを行ったんですか?
佐藤 そうです。SHOEIさんは岩手工場が一関市内にあってこれまでも寄附をしていただいていたのですが、大きな額としては3か年目に入っていました。そこで私から石田健一郎社長に通常の寄附よりも税額控除の割合が大きい企業版ふるさと納税制度というのがあります、とお伝えしました。石田社長からは、若者や女性の活躍、雇用の吸引力を上げることにつながるならば喜んで、とご賛同いただけたわけです。
クレイ 企業版ふるさと納税制度を使った寄附のあり方を見ていると、CSR(企業が持つ社会的責任)や SDGsといったPR目的で利用することがほとんどですよね。今回のように自治体から趣旨を説明して賛同を得ることは、まっとうではあるけれどレアケースだと思いました。
佐藤 「お金を出してください」とはなかなかお願いしにくいことなんですよね。でもご賛同いただけて、とてもありがたいことだと思っています。