使用済み紙おむつのリサイクル技術を花王が実用化へ

花王公式ホームページより

使用済みの紙おむつは、年間約200万トンがゴミとして焼却処分されていると言われています。これは燃えるゴミ全体の4〜6パーセントにのぼります。紙おむつは水分を多く含むため、焼却炉の負担にもなります。そこで、花王と京都大学は「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の開発を進め、現在、愛媛県西条市の協力で実証実験を行っています。2023年中に技術を確立し、2025年以降の実用化を目指しています。

使用済み紙おむつは水分の多い排泄物を含むため、保管、回収、運搬の負荷が大きく、悪臭が発生するなどの衛生面の問題もあります。これを炭素化すれば、殺菌と消臭ができ、体積が大幅に減るために回収頻度も減らすことができます。紙おむつを燃やすとCO2が出ますが、炭素化によって炭素が固定化されるため、環境負荷も低減されます。さらに炭素化された紙おむつを炭素素材に変換すれば、吸着剤や土壌改質材などにリサイクルできます。

花王は炭素化装置を開発し、2021年から西条市の保育施設で実験的に運用しています。この保育施設では、使用済み紙おむつは1日平均7キログラム発生します。装置を使うことで紙おむつの体積はおよそ20分の1となり、1日1回だけ装置の稼働すれば、月に1回の回収で済むことがわかりました。花王では現在、処理時間がもっと短い第2号機の開発を進めています。
保育所に設置された炭化装置

保育所に設置された炭化装置


この炭化装置で作られる物質は、「半炭化物」と呼ばれています。熱分解により炭素成分が多い物質という意味です。花王と京都大学は、この半炭化物の再利用先として、タイヤの充填剤や電子材料などの高度リサイクル素材、土壌改質剤、植物育成や下水処理に活用する活性炭などへ変換する技術の開発も行っています。
半炭化物

半炭化物


花王では、今年中にこれらの技術を確立し、2025年以降のリサイクルシステムの社会実装に向けて、炭素化装置の設置拠点や回収方法などのインフラを検討してゆくと話しています。

日本は少子化が進んでいるとは言え、超高齢化社会でもあるため紙おむつユーザーはむしろ増える可能性があります。排泄物を含む紙おむつを普通のゴミとしてポイポイ出すことに、抵抗を覚える人も少なくないでしょう。こうしたシステムが普及すれば、心の負担も少し軽減されますね。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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