この件に関しては、2020年に「枠組み合意」が作成され、昨年8月には資金をウズベキスタンに返還するための合意文書が署名された。
基金の創設はウズベキスタン新政府が提案したものであり、スイスもこれに同意した。だが現在、基金は宙に浮いた状態にある。カリモワの資金が、なぜまだウズベキスタンに届いていないのか、理由は明確ではない。
ウズベキスタン最高裁は2020年、恐喝やマネーロンダリング(資金洗浄)などの金融犯罪について、カリモワに有罪判決を言い渡した。カリモワの資産の凍結解除に動いた国はスイスが初めてだったが、米国もこれに続くかもしれない。ウズベキスタン政府は、早期の凍結解除を求めている。新型コロナウイルス流行と、最大の貿易相手国であるロシアへの経済制裁の影響を受けるウズベキスタンは、資金を欲しているのだ。
カリモワはかつて、ウズベキスタンの政界でも権勢を誇った。駐スペイン大使のほか、国連ジュネーブ事務所の常駐代表を務めていたこともある。一時は、父親の後を継いで大統領になるのではという臆測が流れたこともあった。
カリモワは、ソ連崩壊後に登場した富豪令嬢の典型と言える。「グリ(Guli)」という名のジュエリーブランドを経営し、自身のテレビチャンネルを持っていた他、グーグーシャという芸名を持つポップスターでもあった。約38ヘクタールの敷地を持つ宮殿のような邸宅に住み、敷地内にはワイナリーやナイトクラブまであった。そんなカリモワの転落劇は、まるで映画のストーリーのようだった。
カリモワに関連し凍結された資金はルクセンブルク、ベルギー、スイスやオフショアのタックスヘイブン(租税回避地)で合わせて15億ドル(約2000億円)に上る。
カリモワは、たとえスイスとの合意の結果として釈放されたとしても、不正に得たすべての資金を返納しない限り、米国で裁判にかけられる可能性が高い。ウズベキスタン政府は、米国とスイスに対し、残りの資産の凍結解除に向け共同で取り組むよう求めている。
(forbes.com 原文)