ファッション

2023.02.19 16:00

ディテールに表れる、老舗フェラガモの強み

Forbes JAPAN編集部
森岡:そのオーナメントにも「ガンチーニ」が細工されているのです。こんな使い方があったのかと驚きました。

小暮:「ガンチーニ」は日本語で「小さなフック」という意味をもつそうです。これまでこのブランドのメンズの靴ではこの「ガンチーニ」をアッパーの金具に用いたビットモカシンがアインコン的な靴でした。

森岡:「ダブルガンチーニ」と呼ばれるビットが付けられたモカシンでしょう。あの靴、まだまだ人気がありますし、バリエーションも増えています。このモデルはそれをバージョンアップさせたデザインと言えるかもしれません。「ガンチーニ」を密かに使っている、そんなデザインも洒落ています。加えてデザイン的には赤のインソールも効いています。

小暮:この赤、ゴージャスでエレガントですね。パーティなどの特別な場面に履いていきたくなるような靴ではないでしょうか。

森岡:長い伝統をもちながら、新しいアイデアに果敢に挑戦していく、そんな“進取の精神”をもっている老舗のブランドらしさが感じられます。

小暮:前にもお話ししましたが、フィレンツェの本社にあるミュージアムで、サルヴァトーレ・フェラガモさんがデザインした膨大な数の靴やデザイン画を見せてもらいました。デザインも使われている素材も本当に斬新なものが多く、靴に対する彼の熱意が伝わってきました。それだけのアーカイブがあるからこそ、この靴もバッグも生まれたのだと思います。

森岡:アーカイブは本当に大事ですね。ある意味、財産。それをもっているのも老舗の強みと言えるのではないでしょうか。

小暮:私も同感です。



森岡 弘◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ、現在に至る。

小暮昌弘◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。82年、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。

photograph by Masahiro Okamura|text by Masahiro Kogure|fashion direct ion by Hiroshi Morioka|illustration by Bernd Schifferdecker|edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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