ヘッジファンドは空売りを準備
2014年の創業以来、テザー社が開示したカストディアンは2社のみで、そのうちの1社のプエルトリコのNoble Bankと同社は2018年に関係を絶った。テザー社はその後、バハマのDeltec Bank & Trust(デルテック)を起用した(2022年1月にデルテックはバハマの新聞のナッソー・ガーディアンに、アンスバッハを買収したことを伝えた。その当時、アンスバッハとテザーの関係は公にされていなかった)。しかし、2021年にテザー社とビットフィネックスが裏づけ資産を偽っていたとされた裁判で、同社が1850万ドル(約25億円)を支払い和解したことで、財務内容への疑惑はさらに強まった。この問題に詳しい関係者によれば、デルテックにも監視の目が向けられる可能性があったという。これを受け、BNYメロンなどの米国の大手銀行はデルテックとの関係を断っている。
また、それとほぼ同時期に、テザー社は資産の大部分をデルテックのそばにある、複数の米銀との取引を持つキャピタル・ユニオンに移し始めた。さらに、ニューヨークのキャンター・フィッツジェラルドに口座を開き、コマーシャルペーパーを米国債に変換し始めた。
この辺りの事情に詳しい関係者によると、キャンター社は同社の関連会社のBGCパートナーズが、大量のUSDTを売買していたことから、テザー社とつながりを持ったという。キャンター社はその後、暗号資産業界における存在感を高め、昨年11月にはリップルのブラッド・ガーリングハウスCEOとMoonPayの CEOのイヴァン・ソト・ライトが登壇した暗号資産のカンファレンスを開催した。
一方、テザーの競合であるサークルは、準備金の65%近くをブラックロックが管理する米国債で保有している。
テザーの新たな銀行パートナーたちは、同社とのつながりを公にしてこなかったが、デルテックの幹部はテザーとビットフィネックスとの関係を、メディアに語り続けた。2021年10月に、デルテックのジャン・シャロパン会長は、同社がテザーの準備金の4 分の1の約150億ドルを預かっていることを明らかにした。
それ以来、アルドイノを含むテザー社の幹部は、同社の透明性をアピールし続けてきた。しかし、長い間約束されていた監査が行われない中で、7月には、ヘッジファンドがUSDTを空売りするために数億ドルのローンを組んだ。これを受け、テザー社のアルドイノは「彼らは我々を悪者にしようとしている」とツイートしていた。
ブルームバーグは昨年、テザーの幹部が銀行詐欺の疑いで司法省の捜査に直面していると報じたが、司法省はこの調査についてコメントを控え、テザー社もこの報道を否定した。
テザー社は、そのような状況下でも昨年の「暗号資産の冬」を通して数十億ドルを償還し、逆風の中で耐えてきた。シグネチャー銀行やシルバーゲート銀行、ムーンストーン銀行などの一部の銀行はかつて、暗号資産業界に対して積極的にサービスを売り込んでいたが、FTXの破綻をきっかけに、この業界から手を引き、ボラティリティが激しい市場へのエクスポージャーを減らしている。
(forbes.com 原文)