欧州

2023.02.16 17:00

アムステルダム売春街、大麻の路上使用禁止へ 観光客の迷惑行為絶えず

アムステルダムの飾り窓地区(Getty Images)

アムステルダムの飾り窓地区(Getty Images)

オランダ・アムステルダムの売春宿が集まる有名な歓楽街「飾り窓地区」が、この春から大麻の路上吸引禁止エリアになる。市議会によると5月中旬以降、屋外の公共スペースでは大麻を吸うことが禁じられ、吸引は「コーヒーショップ」と呼ばれる大麻販売店の中でのみ認められる。市の決定の裏には、住民の生活を脅かす深刻なオーバーツーリズム(観光公害)問題がある。
advertisement

市議会の9日の発表によると、大麻吸引の禁止エリアは、必要に応じてコーヒーショップの屋外テラス席に広げることも検討されているという。

新たな規則ではこのほか、これまで午前6時まで認められていたセックスワーカーの営業時間が午前3時までに切り上げられる。また、バーやカフェ、レストランの営業時間も平日は午前2時まで、金曜日は午前4時までに制限され、午前1時以降は新しい客の受け入れができなくなる。

さらに、市中心部の店舗は木曜日から日曜日の午後4時以降は酒類の販売が禁止され、ウインドーに陳列している酒類は撤去するか、覆いなどをして隠す必要がある。
advertisement

市議会は、これまで実施してきた公共スペースでの飲酒禁止を今後、厳格に運用していく方針も強調している。

アムステルダムの住民は長年、飾り窓地区をはじめとする市中心部の繁華街は観光客があまりにも多く、生活に支障が生じていると訴えてきた。アムステルダムを訪れる観光客は年間およそ1800万人に上る。

市側もかねて対策に取り組んでおり、今回の措置もその一環だ。新しい措置は住民や企業経営者など関係者側に提示し、4週間を期限に意見を募る。フィードバックを踏まえて市議会で審議し、今年夏前には飾り窓地区で実行に移す予定だ。

住民を悩ませるオーバーツーリズム問題

一連の措置は、飾り窓地区の混雑やそれに絡む問題を緩和するのが狙いだ。オランダ政府による大麻などの「ソフトドラッグ」に対する寛容な政策と、売春を合法化したうえで管理するアプローチによって、同地区は観光客に人気の歓楽街になっている。

一方で、この地区周辺は特に夜間、大麻や飲酒に興じた人々が長時間たむろし、住民の生活の質や治安に悪影響を与えていることを市側は懸念している。

アムステルダム市は飾り窓地区での迷惑行為を減らすために、これまでも公共スペースでの飲酒の禁止のほか、ホストの活用、混雑時間帯の一方通行の導入、一部地区の閉鎖、路上での客引き対策などに取り組んできた。

アムステルダム市は近年、オーバーツーリズムが地元の住民や地域に与える影響を緩和することに力を入れてきた。たとえば、飾り窓地区が住宅街でもあることを観光客に知ってもらうため、「We Live Here(私たちはここに住んでいます)」というキャンペーンを展開し、ポスターや看板を通じて住民の静かな生活に配慮するよう訴えてきた。

市側は近年、対策を一段と強化している。アムステルダム市のフェムカ・ハルセマ市長は昨年4月、ドラッグツーリズムがもたらす迷惑行為を減らすため、外国人観光客のコーヒーショップへの出入りを禁止するよう求めた。同11月には、ソフヤン・ムバラキ副市長が、市内での飲酒やドラッグ使用、性サービスの利用を控えるよう呼びかけるキャンペーンを始めている。

今回の措置が5月半ばの発効後、飾り窓地区の問題軽減にどれだけ寄与するかはまだ不透明だが、市議会が繰り返し述べてきた「アムステルダムのイメージを浄化する」という目標に向けて、改めて明確な意思を示した格好だ。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事