観光地じゃないハワイ。経営者が語るホノルルセンチュリーライド

ホノルルセンチュリーライド2022(提供:ホノルルセンチュリーライド受付事務局)

この数年で、自転車を取り巻く環境は大きく変化した。首都圏から始まったシェアサイクルは全国に広がり、新たな移動手段として定着しつつある。

パンデミックの影響も大きい。感染リスクの低い通勤・通学手段である自転車は、在宅による運動不足も解消できるとあって、2020年度に過去最高の販売額を更新した。また、世界的に脱炭素の動きが加速するなか、自転車は環境負荷の低い乗り物としても注目を集めている。

一方、単なる移動手段としてではなく、スポーツ、あるいはレジャーとして、自転車、なかでもロードバイクに魅了される大人が増えている。

「子どもの頃に乗り方を覚えて、遠くに行けるようになって世界が広がった感覚。自転車は大人のいい遊びです」と話すのは、セールスフォース・ジャパン常務執⾏役員の安田大佑氏。スタートアップスタジオquantum代表取締役社長の及部智仁氏は、「以前はランニングをしていたけれど、トライアスロンをする起業家の先輩にすすめられて始めたらはまっていった」という。

コロナが落ち着き、ハワイがふたたび身近な島となった昨年9月、3年ぶりに「ホノルルセンチュリーライド」が開催された。日本でお馴染みのホノルルマラソンと同様、タイムや順位を競うレースではなく、誰でも参加できる“ファンライド”だ。

コースは25マイル(約40km)刻みで、50、75、100マイルの4種類(提供:ホノルルセンチュリーライド受付事務局)

ハワイの風を感じながら、美しい海岸や山間、街並みを駆け抜ける──。そんなイメージに魅せられて、安田氏、及部氏ほか、親交のある8人の起業家、経営者が参加した。ロードバイク歴は、今回を機にバイクを購入した初心者、楽しみ始めて数年の愛好家、元実業団メンバーまでさまざま。

それぞれにとって100マイル(160km)というライドは、どんな時間だったのか。「来年も絶対に参加したい」と口々に語る8人を代表して、以下の4名に話を聞いた。


*写真左から
高橋雄介:Truffle Technologies代表取締役、慶應義塾大学SFC研究所上席所員
中村隆洋:ポーラスター・スペース代表取締役社長
及部智仁:スタートアップスタジオquantum代表取締役社長、東京工業大学特任教授
安田大佑:セールスフォース・ジャパン常務執⾏役員

一緒だから完走できた

「日常で辛いことはたくさんありますが、かつて参加したホノルルマラソンは本当に辛かった。自転車はそこまでではないだろう、ハワイの風を感じて走り、経営者の方々と一緒に楽しめたらぐらいの気持ちで参加したんですが、めちゃくちゃ辛かったです」

そう話すのは、リモートセンシング技術で、食糧危機など世界の課題解決に取り組む中村氏。バイクは初心者で、今回のためにマシンを買うも、練習をする時間がなく、日本で一度も乗ることなくハワイ入りをした。しかし、防衛大出身で運動神経が抜群。現地でバイクの組み立てを手伝った及部氏は、その実力に驚愕したという。

「実はロードバイクに乗るのはそう簡単じゃない。しかもビンディングシューズで足を固定するなんて、普通いきなりはできない。それで走り切る中村さんは常人じゃありません」

ともにコース初参戦という二人は、事前に決めていたわけではないが、結果として一緒に走り、100マイルを完走した。朝6時に出発してから10時間以上、ゴールは16時を過ぎていたという。
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編集=鈴木 奈央

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