政治

2023.02.16 08:15

ブラジル前大統領が沈黙破る 3月に帰国し野党勢力率いる考え

遠藤宗生

ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領。滞在中の米フロリダ州キシミーの住宅前で(Paul Hennessy/Anadolu Agency via Getty Images)

米フロリダ州に滞在しているブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、3月に帰国する予定だと語った。メディアのインタビューに応じたのは、昨年の大統領選で左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領に敗れて以降初めて。

ボルソナロは、先月8日に支持者らが連邦議会などを襲撃した事件を扇動した疑いや、在任中の不正行為などで捜査対象となっており、苦境に立たされている。同紙が14日に掲載したインタビューでは、現在も自身はブラジル右派の指導者だとの考えを示し、「右派運動は死んでいない。これからも続いていく」と述べた。

ボルソナロは大統領選での敗北を認めていない。WSJに対しても「不正があったとは言わないが、プロセスが偏っていた」と主張し、改めて敗北の受け入れを拒否した。ただし、この主張を裏付ける証拠はこれまで示していない。

昨年末からウォルト・ディズニー・ワールドにほど近いフロリダ州キシミーの住宅に暮らしており、KFCで1人でフライドチキンを食べたり、スーパーマーケットPublix(パブリックス)のレジ近くで立ち読みしたりする姿が目撃され、地元住民の好奇心の的となっていた。

WSJによると、先月末には6カ月の観光ビザを申請したが、今も外交ビザで米国に滞在している。滞在の延長が認められたかは不明で、法務担当者はフォーブスの取材に現在のところ応じていない。

ボルソナロのインタビューに先立ち、ルラは10日にホワイトハウスでジョー・バイデン米大統領と会談した。ホワイトハウスによると会談では「米国とブラジルの関係の重要性と永続性を再確認した」とされ、バイデンはブラジル訪問の招待を受けた。ボルソナロはWSJに対し、ルラの訪米は「注目」を浴びるためだったと一蹴した。

ブラジルは昨年10月の大統領選でボルソナロが敗北した後、政情不安に陥り、先月8日にはボルソナロの支持者らが連邦議会を襲撃して破壊行為に及ぶ事態に発展した。この事件は、支持者が選挙結果に対する根拠のない疑念に触発されたとみえる点で、2021年1月6日にドナルド・トランプ前米大統領の支持者らが起こした米連邦議会襲撃事件と広く比較されている。ボルソナロは大統領在任中、トランプと比較されることを好み、トランプと緊密な同盟関係を築いて、トランプ本人からは親しみを込めて「熱帯のトランプ」と呼ばれた。昨年の大統領選ではルラに1.8ポイント(約200万票)差で敗れたが、同国の人口が約2億2000万人であることを考えれば比較的僅差と言える。

先月8日の事件に加えて、ボルソナロは在任中に故意に偽情報を流した疑惑など、不正行為の疑いで捜査対象となっている。ボルソナロは不正を繰り返し否定しており、自身が1月8日の襲撃に関与したとの疑惑について「クーデター? 何のクーデターだ? 司令官はどこにいた? どこに軍隊がいて、どこに爆弾があったのか」と反論した。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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