幸いなことに、いずれも真実ではない。太陽のどの部分も剥がれ落ちていないし、JWSTが太陽に向けられたことはなく、もちろん天文学者たちは困惑などしていない。
ただ、太陽でちょっとクールなことが起きたのはたしかだ。
ではなぜ、誤った見出しが横行しているのか?
多くの記事の最初の情報源は、天文学者で宇宙気象予報士のタミサ・スコフ博士による2月2日のツイートだ。「極渦(きょくうず)の話をしましょう。北側のプロミネンス(紅炎)がフィラメント本体から剥がれ落ち、太陽の北極を取り巻く巨大な極渦の中をぐるぐる回っています。ここでは太陽の55度以北の大気力学を理解することが極めて重要です」と博士は語っている。
ツイートにはNASAの太陽観測衛星Solar Dynamics Observatory(ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー)が捉えた動画も添付されている。
ここから山ほどの誤解とツイートの拡散が始まり、多くのおかしな見出しが生まれた。
Talk about Polar Vortex! Material from a northern prominence just broke away from the main filament & is now circulating in a massive polar vortex around the north pole of our Star. Implications for understanding the Sun's atmospheric dynamics above 55 degree here cannot be overstated! pic.twitter.com/1SKhunaXvP
— Dr. Tamitha Skov (@TamithaSkov) February 2, 2023
実際に起きたことは次のとおりとなる。
太陽で何が起きた?
太陽のありふれた「プロミネンス」が、普段と少し違うことをしているところが発見された。プロミネンスとは、プラズマと呼ばれる帯電したガスのループで、しばしば太陽から噴出する。皆既日食の時には肉眼で見ることが可能だ。皆既日食中の太陽のクローズアップ画像に灼熱のプロミネンスが見える(Getty Images)
2月2日に何が起きたのかといえば、プロミネンスが1つ切り離され(あるいは、スコフ博士が使った残念な表現でいうなら「剥がれ落ち」)、その後、太陽の北極の上でぐるぐると回った。