やっぱり、NFTやFTが画期的なのは二次流通マーケットで価格が変動し、もしも応援していたチームに人気が出てきたら、そのNFTの価値が上昇してファンの方たちも恩恵を授かれるかもしれないところにある。そういった側面があるからこそ、そのスポーツやチームのファン以外の人も巻き込むことができ、マーケット自体を大きくしていけるんじゃないかと。
澤邊:僕も決してその仕組みに反対しているわけではないんです。でも、株式市場のように企業が生み出した利益をもとに利益の分配や株価の変動が行われているなら仕組みとしても明確なんですが、ファンコミュニティの場合は儲けることが第一ではないですよね。ファンの想いが込められたNFTを投資だけが目的の人たちに荒らされてしまう状況を避けられないものかと思いまして。
國光:大切なのは、NFTの設計を二階建てで考えていくことなんだと思いますね。一階は、何があっても絶対にそのNFTを売らないで応援し続けるコアファンが支える層です。その数をしっかりと増やしていくことで、株で言うところの下値抵抗線が形成できるわけです。
一方、二階には純粋なファンではないけれど、「儲かりそう」とか「面白そう」といった理由からそのNFTを購入しようとする投資家たちを取り込んでいきます。それにより上値をつくっていくイメージです。
この2つのバランスを上手くとっていくことで澤邊さんが危惧する状況を防げるんじゃないですかね。
澤邊:それは上手い考え方ですね。例えば、最初にNFTやFTを売り出すときに、まずは一階のコアファンから売り出していき、投資目的の二階の人たちは後にするというのも有効かもしれませんし。
國光:そうですね。あとはファンと投資家ではそれぞれが価値に感じる特典も違うと思うので、それぞれの目的に合った特典を用意するのも有効だと思います。
澤邊:なるほど。NFTを発行する側がそういったコミュニティをデザインするノウハウを学んでいく必要がありますね。
國光:おっしゃるとおり、まさにそこがすごく大切で。最近、Web3の業界ではDAO(Decentralized Autonomous Organization)と呼ばれる自立分散型の組織が注目を集めているのですが、この組織の特徴は大きく三つあって、一つはビジョンがあるところ。もう一つがこのビジョンに共感して生まれたコミュニティがあるところ。そして、最後がこのコミュニティが発行する独自のNFTやトークンが存在するところです。
メンバーがコミュニティの掲げるビジョンの実現に向けて頑張ると、発行したNFTやトークンの価格が上がり、結果としてメンバーみんなが幸せになれるという組織設計になっているんですが、スポーツチームというのは地元への貢献やリーグでの優勝など、ビジョンが明確なものが多く、このDAOの成功事例に当てはまりやすいんですよね。なので、DAOの仕組みを上手く回していける優秀なDAOマネージャーのような人が現れたら、スポーツ業界のNFTもグッと成功率が高まっていくと思いますね。
澤邊:将来的にそういった新しい職業が生まれてくるかもしれませんね。
國光:確実に生まれると思います。
従来型の組織では、株やストックオプションを保有する創業メンバーやベンチャーキャピタルばかりに大きな利益が還元され、従業員は給与をインセンティブに働くしかなかったが、DAOでは組織に貢献した参加メンバー全員に利益が還元される仕組みになっているため、それをインセンティブに皆が自立的に組織に貢献しようとする