政府の取り組みやプライム上場企業への気候変動リスク開示義務などにより、日本でもCO2排出量管理(計測・見える化)に対する需要は増加している。
計測の基準となるのは、世界共通の「GHGプロトコル」。⾃社の直接排出・間接排出を計上する範囲(Scope1・2)と、⾃社商品・サービスに関連した他社の排出を計上する範囲(Scope3)に区別されている。
アメリカの調査会社によると、2020年に95億米ドル(約1.2兆円)と評価されたCO2管理の市場は、年間6.1%で成長し、2028年には137億米ドル(約1.8兆円)を超えると予想されている。
魅力的な成長市場に参入が相次ぎ、マイクロソフトやグーグルなどが独自のプラットフォームを開発しているほか、三井住友銀行も出資するスタートアップ「パーセフォニ(米国)」が台頭している。
営業10人未満でも2000社が導入
競争が激しさを増すなか、事業拡大に自信を見せるのは、2021年9月創業のゼロボード代表、渡慶次道隆(とけいじみちたか)だ。東京大学を卒業後、JPMorganや三井物産を経て、空飛ぶバイクなどを手掛けるA.L.I.Technologiesに転職。企業向けのCO2排出量算定クラウドサービスの開発を進め、MBO(経営陣や従業員が自社の事業部門を買収して独立すること)によってゼロボードを立ち上げた。ゼロボードは、サプライチェーンや商品ごとのCO2排出量を算出し、ダッシュボードで「見える化」するとともに、国内外の開示形式に合わせて出力するソフトウェアサービスだ。
会社を立ち上げてわずか1年余りで、同社のサービスはすでに約2000社に導入されている。快進撃とも言える急拡大を担っているのは、また、70を超えるパートナーだ。大手商社やメーカー、メガバンク、それに行政などが名を連ねる。
「営業は10人もいません。社員が疲弊するのでアウトバウンドの営業も一切行っていません。かわりにパートナーと協力して顧客を開拓する戦略をとっています。
例えば、パートナーである大手銀行から取引先企業を紹介してもらうといった形で、見込み顧客を直接紹介してもらい、そのなかで効率的に営業しています。
パートナー選定では、営業のシナジーが見込みやすい『商社』『銀行』『電力・ガス』『自治体』にターゲットを絞っていましたが、当初の予想を遥かに上回るスピードで導入が進んでいます」