政治

2023.02.18

ウクライナ、壊れたロシア戦車を有効活用 貴重な回収車に改造

ウクライナの戦闘で損傷したロシア軍のT-72B戦車(Getty Images)

ウクライナ軍は、ロシアから接収した1970年代の旧式戦車「T-62」数十両の良い使い道を、ついに見つけた。その使い道とは、工兵車への改造だ。

これは素晴らしいアイデアだ。無限軌道の装甲戦闘工兵車(今回のケースでは装甲回収車=ARV)は極めて有用だが、その数は常に不足している。T-62ベースのARVは、T-62戦車そのものよりはるかに価値が高い。ロシアの大規模な攻勢と戦いながら、保有するARVは極めて少ないウクライナ軍にとっては、特にそうだ。

SNS上の投稿からは、少なくとも2両の接収されたT-62が、ウクライナの作業場でARVに改造中であることが示されている。改造方法は、戦車から8トンの砲台を取り外し、代わりに重荷重用ウィンチを取り付けるというものだ。

ARVは戦場で戦車の後を追い行動する。戦車が敵の攻撃を受けたり、ぬかるみや溝にはまってしまったりして移動不能になると、ARV部隊は戦火をかいくぐり、戦車をつり上げて救出する。ブルドーザー・ブレードなどを装着すれば、他の戦闘工兵車と共に要塞化の準備や、損傷した車両の修理などを支援できる。

戦車は装甲が頑強なため、戦闘によって完全に破壊されるのではなく、損傷することの方が多い。戦闘後には、回収可能な戦車がその場に放置されることがしばしばある。この戦利品を獲得できるのは、最も迅速なARVを持つ軍だ。損傷した戦車は、修理して再び戦場に送り込むことができる。

ウクライナ軍は、1年前にロシアが侵攻を開始した当時、保有していたAVRはBREM-1、BREM-2、BREM-M、BREM-64、およびBRS-4を合わせて36両前後だった。これに対し、侵攻前のT-64、T-72、T-80からなる戦車部隊の数は1000両近くで、戦車とARVの割合は25対1となる計算だ。自国の戦車はおろか、これまでに接収した約2800両のロシア戦車の回収に必要なARVが不足しているのだ。


以前、壊れたロシア戦車をウクライナの農業用トラクターが引っ張る様子を写した写真が話題を呼んだが、この光景がロシアのウクライナ侵攻を象徴するものの一つになったのには、理由があった。あのトラクターは、DIY版のARVだったのだ。

こうしたことから、ウクライナ軍が接収したものの行き場を失ったT-62が増え始めたとき、その一部をARVに作り変えることは理にかなっていた。

時代遅れの光学機器と115mmの戦車砲を備えたT-62は、最新鋭の戦車やミサイルを装備した歩兵隊に太刀打ちできない。しかしARVは戦闘に従事する必要はない。T-62ベースのARVは1両当たり、放棄されたT-64やT-72、T-80、T-90を数両回収できる。

ウクライナ軍が何両の戦車を改造しているのかはわからない。ウクライナ軍は少なくとも43両のT-62を接収している。そうした戦車の一部は、おそらくロシアがT-62を展開したウクライナ南部に展開する大隊で、少なくとも短期間にわたり使用されていた。

ただ、ウクライナ軍は間もなく欧米製の新型戦車数百両を入手する予定で、それと比べると旧式のT-62はそれほど役に立たない。ウクライナ軍にとっては、すべてのT-62を工兵車に改造する方が賢明だろう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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