そのため、責任を持ってAIが活用されることが非常に重要です。十分な監視が行われなければ、従業員に対するシステム上のバイアスが深まり、従業員の信頼が失われることになります。
責任を持ってAIを使用するための、4つの重要な柱となるポイントを組み込むことで、スキルベースの組織は透明性の高いアプローチを実践でき、従業員と雇用者にメリットをもたらします。本題について世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。
「仕事」が急速に変化しているため、従来型の労働力モデルはこの変化に対応できていません。これが「スキルベースの組織」という新しい言葉を生み出しました。調査によると、現在、企業エグゼクティブの90%がスキルベースの組織づくりを試みています。
仕事からスキルへの移行は複雑です。この移行のためには、役割をスキルベースの細かなレベルまで解きほぐす必要があります。時間を要するこの作業は、人事システムや学習システムがしばらく更新されていない場合、データが欠落する可能性もあります。加えて、組織が持つスキルの数は、役割や仕事の数のおよそ2倍にもなります。
絶えず進化している何千人もの従業員が持つ多数のスキルを、マニュアル作業で追跡することが現実的ではないと認識した組織は、AI(人工知能)に目を向けました。これは正しい方向へ向かうステップであり、スキルベースの組織の可能性を確実に受け入れることができる唯一の方法です。ただし、慎重に進める必要があります。
人々の生計にAIが関わることになる場合、その生活に影響を及ぼすAIは、できるだけオープンで、透明性が高く、倫理的でなければなりません。AIがうまく機能しなかったという話は、残念ながらあまりにも頻繁に耳にします。アマゾンは、女性に対する偏見を理由に、AI採用モデルを取りやめざるを得ませんでした。ごく最近では、採用や選考のアルゴリズムが障がいのある人を差別しているという懸念も生じています。
責任を持ってAIを活用するための重要な柱
スキルベースの組織では、AIを適切に活用することが極めて重要です。それを怠ると、仕事からの移行に投じられた努力がすべて無駄になるでしょう。このアプローチは、責任を持ってAIを活用するための4つの重要な柱を基盤としています。第一の柱:データソースを知ること
AIツールが有用なのは、扱うデータのソースが適切なものである場合に限られます。AIに与えるデータが正確でなければ、その結果も不正確なものになります。AIを組織的な規模で使用する場合、偏ったデータや不完全なデータを基にモデル化すると、偏見を大きく増幅させるおそれがあります。学習用のスキルデータをAIに与え始める前に、それができるだけ正確で標準的なものであるよう監査を行う必要があります。最終的に、すべてのデータが客観的で公平なものになるとは限りません。例えば、テックウルフの調査では、男性従業員は、自分のスキルに対して過大評価した報告をする傾向がある一方、女性従業員は逆の傾向があることが明らかになりました。スキルデータを使用する際、背景にあるこうした要素を理解していないと、重要な人材を排除する仕組みとなってしまいます。これでは、スキルベースの組織の意義がすべて損なわれてしまいます。
データソースを評価する際に、組織は4つの特性を念頭に置く必要があります。