近年、企業は必ずしも大卒資格や経験年数にこだわらず、求職者を積極的に受け入れるようになってきている。そうしたトップトレンドの1つが「スキルベース採用」と呼ばれる採用方式だ。TestGorilla(テストゴリラ)の
The State of Skills-Based Hiring 2022(スキルベース採用の現況2022)レポートによれば、調査対象の76%の雇用主が新しい人材を見つけるために何らかのスキルベース採用を行っており、約55%が役割に応じたスキルテストを用いている。
学位がなくても仕事ができる専門家の数が増えていることからも、このシフトが加速していることは明らかだ。たとえば過去1年間、米国のLinkedIn上で、学位の代わりにスキルや責任を前面に押し出した求人広告が21%増加した。また、SHRM(Society for Human Resource Management)の
最近の調査によれば、雇用前テストを行っている企業のうち4社に1社は、今後5年間でさらに利用を増やす予定だという。また、雇用前テストを行っていない企業のうち10社に1社は、これから行う予定だ。
厳しい経済状況下でも、企業は高いスキルを持つ労働者を雇用し、つなぎ止めるのに苦労している。そのため、最新の人材採用の手法を取り入れることが、これまで以上に重要になっている。ここでは、いち早くスキルベース採用を取り入れた企業が、なぜそのような取り組みを行うのかをみてみよう。
候補者の質の向上
不適切な人材を採用すると、企業に大きなコストがかかる。『Topgrading(トップグレーディング)』の著者であるブラッドフォード・スマート博士の研究によれば、不適切な雇用によるコストは、その人物の実際の給与の5倍から27倍に上ると
推定されている。だが、企業がスキルベース採用を実施すると、候補者の質は向上する。テストゴリラの調査によると、92.5%の企業が誤採用率を減らし、そのうち44%の企業は25%以上の減少を報告している。
人材プールの拡大
スキルベース採用アプローチの最も明白な利点の1つは、より幅広い人材が候補者になるということだ。多くの業界で優秀な人材が不足している今、それは大きなメリットとなり得る。さらに、スキルベース採用への関心は、民間企業にとどまらない。たとえば2022年5月、米国メリーランド州は職種のほぼ50%について4年制大学卒業の要件を撤廃すると発表した。この変更は、適性はあるが学歴を持たない候補者に機会を与えるきっかけになる画期的な動きだ。