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2015.06.26

IT企業が古民家に押し寄せる テレワークが生んだ「神山町の奇跡」

人口約6,000人の徳島県神山町(画像提供=NPO法人グリーンバレー)

人口の減少に苦しむ地方自治体が多い中、抜群のITインフラと豊かな自然環境で企業誘致に成功しているのが徳島県の神山町だ。名刺管理サービス「Sansan」や「Eight」で知られるSansan株式会社を皮切りに、約5年で12社が神山町にサテライトオフィスを構えるようになった。

徳島県は2000年代から光ファイバー網の整備を推進し、その普及率は全国1位。クラウドによる情報共有や勤怠管理が日常化したIT企業にとって、都会のオフィスに社員全員を集める雇用形態はもはや必須ではない。オフィス賃料を抑え、豊かな自然の中で「職住接近」を実現する雇用の在り方としても、サテライトオフィスは注目を浴びている。



神山町で移住支援や空き家の再生を行うNPO法人グリーンバレー理事長の大南信也氏によると「家族とともに滞在出来る仕組みを作ったり、新入社員研修を神山で行う企業も増えてきた。本社のエンジニアが神山町へ移住したり、徳島県で現地採用するケースも生まれています」とのこと。

2010年にサテライトオフィス「Sansan神山ラボ」を設立したSansanは築70年の古民家をオフィスに改装。現在は2名のエンジニアが常駐してアプリ開発を行なっている。Web会議システムをはじめとするコラボレーション環境を整え、毎朝9時半には必ず東京本社のチームと合同の「朝会」を行う。チャットツールや社内SNSを駆使し、600キロ離れた本社とも「日常会話レベルでつながれる仕組み」を構築している。

Sansan社の神山ラボ外観。
Sansan社の神山ラボ外観。

屋外でのミーティング風景(画像提供=Sansan株式会社)
屋外でのミーティング風景(画像提供=Sansan株式会社)

Sansan創業者の寺田親弘社長は米シリコンバレーに赴任した経験を持つ。自然豊かな環境でストレスを溜めず働くスタートアップ企業の姿にふれ「環境や働き方も、自由な発想やイノベーションを生み出すことにつながっている」と感じたことが、神山ラボの設置のきっかけになった。

「サテライトオフィス設置の最大の目的は、社員の生産性を高めることでした」と語るのは同社で広報を務める磯山江梨さん。常駐スタッフ以外の社員も「合宿」や「長期滞在」といった形で神山ラボを訪れるが、その際も「通常と劣らない成果を出すこと」が求められるという。
「私自身も年に数回、神山ラボで業務を行いますが、神山に居る間は純粋に業務成果だけで評価される。東京のオフィスにいるよりも集中力を保ちながら業務を行えます」

集中してデスクワークに取り組める一方、「職住接近」により通勤ストレスから解放されるメリットも大きい。
「社員が寝起きする母屋から、離れを改装したワークスペースまでは約10秒。仕事以外は思い切りリラックスした生活を過ごせます。最近は子育てをしている社員が家族連れで長期滞在するケースも増えてきました」

神山町ではIT企業に限らず、飲食店などの様々な事業者向けに古民家を紹介。「ワーク・イン・レジデンス」と名づけてその動きを推進する。2008年以降、カフェの経営者やウェブ技術者、映像作家らを含む約100名がこれまでに移住したという。

「ワーク・イン・レジデンス」で公開された古民家。後に南仏家庭料理の店「カフェオニヴァ」としてオープンした(画像提供=NPO法人グリーンバレー)
「ワーク・イン・レジデンス」で公開された古民家。後に南仏家庭料理の店「カフェオニヴァ」としてオープンした(画像提供=NPO法人グリーンバレー)

「地域創生の文脈で語られがちなサテライトオフィスですが、やってくる企業や個人には、『まずはこの土地で本業を成立させること』を優先して下さいと話しています」と語るのは前出のグリーンバレー理事長・大南信也氏。「人が来れば、アイデアや考えが必ず残る」というのが大南氏の理念だ。

最近では商店街にカフェやレストランも続々とオープン。そこに集う企業同士のコラボレーションも生まれ、町全体が賑やかになるという好循環に発展している。
「ここ10年ほどで、自分で納得のいく働き方やライフスタイルが実現できるかどうかを基準に仕事を選ぶ、意識の高い若者が増えてきました。今後は自治体が補助金などの支援策をエサに企業を誘致する動きも出てくるかもしれませんが、神山町の場合はこの土地の人と自然に惚れ込み、本気でこの場所でビジネスを成立させたい企業が集まっています」(大南さん)

テレワークを通じた働き方の革命と、地方でこそ実現できるライフスタイルの実現。その流れは今、大きなうねりとなって広がろうとしている。

取材・文=上田裕資

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