北米

2023.02.13

米国は今年景気後退入り? 利回り曲線と労働市場のちぐはぐな兆しを読み解く

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あり得るシナリオ

労働市場の楽観論と逆イールドの悲観論。この2つは必ずしも矛盾するものではない。両立するシナリオとして浮上するのが、2023年後半にもリセッション入りするというものだ。というのも、イールドカーブが先見的な指標であるのに対して、労働市場のデータは直近の経済活動を評価したものだからだ。実際、米国の過去の景気循環では、リセッションが近づくにつれて雇用市場が急激に冷え込み、失業率も2、3カ月のうちに悪化していた。要は、労働市場が今のところ堅調であっても、半年後もそうだとは限らないということだ。ただ、このシナリオが現実になるとすれば、雇用統計が数カ月後には弱くなり始める必要があるが、現時点ではその兆しはみられない。

経済学者のクラウディア・サームによると、米経済は失業率の3カ月平均が過去1年の最低値と比べて0.5ポイント上昇したときに、リセッションに陥っているという。足元の雇用統計は強いが、こうした失業率の動きが今年あったとしても、まったくおかしくはない。一方で、その兆候が現時点でみられないのも確かであり、今後も強い雇用統計が続く限り、リセッションの可能性は後退していくだろう。

ほかの経済指標は?

ほかの経済指標には、米経済に対する悲観的な見方を示唆するものもある。たとえば住宅市場は、新築住宅販売件数をみる限り比較的弱い。住宅ローン金利の上昇や、低水準にある米国人の住宅購入能力も、市場にとって逆風になっている。住宅市場が米経済全体に占める割合はそれほど大きくないものの、景気に大きな影響を及ぼすこともある。住宅市場の悪化がリセッションを招くこともあり得るということだ。

消費者心理もどちらかというとネガティブで、各種景況感調査の結果も軟調だ。いずれも2023年の米経済成長が鈍化することを示唆しているわけだが、それがリセッションにまで至るかどうかはやはり不明だ。

他方、明るい指標もある。有力な景気指標の1つである株式相場は、年初来おおむね上昇基調にある。これも良い兆候の1つとみてよいのかもしれない。

まとめ

経済指標は全体的に強弱まちまちの様相となっている。労働市場や株式市場が楽観論を示唆する一方で、イールドカーブをはじめ過去にリセッション予想で高い精度を示してきた指標は逆を示唆している。これらが矛盾しないシナリオの1つが、年後半のリセッション入りだ。その場合、向こう数カ月で労働市場がいくらか弱くなるとみられる。ただ、現時点でその兆しはない。労働市場が堅調なまま、たとえば住宅市場などの急激な悪化をきっかけに、リセッションに突入するという展開も考えられなくはない。もっとも、それは歴史的に異例なケースということになる。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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