ビジネス

2023.02.13

アマゾンが実店舗縮小 食料品店に「うまみ」はあるのか

Getty Images

アマゾンは、食料品店「Amazonフレッシュ」とコンビニエンスストア「Amazon Go(アマゾンゴー)」の複数店舗を閉店し、新規出店を一時停止する計画だ。小売り体験よりも技術に重点を置いたことで、買い物客を遠ざけているとの批判がある。現在、Amazonフレッシュは米国で約38店舗、Amazon Goは米国に28店舗、英国に15店舗を展開している。

アマゾンは先日、さまざまな事業分野で1万8000人の人員削減を発表した。そして今回、経営陣がAmazonフレッシュとAmazon Goの新規出店を延期する方針が明らかになった。代わりに、513店舗(2023年1月31日現在)を展開する傘下スーパーチェーンの「ホールフーズ・マーケット」に注力するという。ホールフーズの店舗は全米44州の351都市に展開し、カリフォルニア州だけで96店舗(全体の約19%)ある。この2年間に新規開店したホールフーズ店舗はごくわずかだ。

アマゾンは長年、食料・日用品分野での成長を目指してきた。当初はオンラインサービスを通じてだったが、その後、AmazonフレッシュとAmazon Goのレジなし店舗を導入し、「Just Walk Out Shopping(立ち去るだけで買い物を)」と大きく書いた看板を掲げて、店を出る際が自分が手にしている購入品を自動的に記録してくれるセンサーを信用するよう、利用客に呼び掛けた。理論的には、素晴らしいショッピング体験に思われる。より少ない従業員で、より素早く買い物を済ませられ、人為ミスも減るはずで、魅力的な冒険的事業と言えるだろう。ただし、一つだけ大きな問題があった。利用者の信用を得られなかったことだ。その結果、今やこの2つの店舗コンセプトは将来を危ぶまれているようだ。

経営陣は、今回の人員削減が食料品部門全体に影響し、これらの店舗の技術や設計に携わる従業員も含まれることを認めた。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は、「これらの店舗では実験的に、競合他社と差別化し、買い物客に響く形式を模索していた。差別化と経済的価値の良いバランスが得られるまで、(Amazon)フレッシュの実店舗を拡大するつもりはない。しかし、2023年中に均衡を見つけられると楽観しているし、均衡が見つかったらより広範囲に展開していく。食料品部門には非常に大きな機会があると思っている」と語った。

英インサイダー・メディアは本件について、小売コンサルタントのリチャード・ハイマンの記事を掲載し、アマゾンは競争の激しい業界に参入し、何十年もかけて複雑な商売を極めてきた食品小売業者と競合していると指摘した。英コンサルティング会社GlobalData Retail(グローバルデータ・リテール)のマネジングディレクター、ニール・サンダースも同様に、アマゾンはこの分野の市場勢力図を全く考慮していなかったとインサイダーに語っている。

アマゾンがEコマースを普及させ、インターネットでのショッピングを時間節約型の楽しい体験にする道を開いたことは間違いない。だが、すべての商品分野での成功は必ずしも同じ道をたどるわけではなく、アマゾンは身をもってそれを体験している。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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