北米

2023.02.11 08:15

スプートニク・ショックの再来だ。米国が中国偵察気球を撃墜した理由

Roman Samborskyi / Shutterstock.com

一方、ロイター通信によれば、バイデン米大統領は9日、中国の偵察気球について、安全保障上の重大な違反はなかったとの見解を示したという。国際社会も、攻撃の意図を明確に確認できない限り、領空に入ってきた物体を撃墜して良いかどうかについては、意見が分かれている。それにも関わらず、バイデン氏はなぜ、撃墜を指示したのか。長島氏は「米国も当初から撃墜を決めていたわけではないと思います。様々な政治的な思惑もあって、撃墜に至ったのではないでしょうか」と語る。気球を巡っては、トランプ前大統領ら共和党から撃墜を求める声が上がっていた。一般世論も「スプートニク・ショック」から、強い対応を求める声が渦巻いていた。長島氏は「次期大統領選も考え、政治判断として撃墜を決めたのではないかと思います」と指摘する。
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それにしても、中国はなぜ、発見されやすい気球を米国に送り込んだのか。長島氏は中国の意図について「米国に探知されずに、米本土領空に侵入できるウエポンを保有しているのだと、知らしめたかったのではないでしょうか」と語る。ただ、それが、中国軍の独断なのか、習近平国家主席の命令によるものなのかはわからないとする。

2011年1月、当時のゲーツ米国防長官が中国を訪問中、中国は新型ステルス戦闘機J20の初飛行試験に成功した。ゲーツ氏が胡錦濤国家主席と会談で、この飛行実験について尋ねたところ、胡錦涛氏は「予定されていたもので、ゲーツ氏の訪中とは関係がない」と答えたという。ただ、胡氏は実験が行われることを事前に知らされていなかったという。

今回の気球問題で、ブリンケン米国務長官は予定していた訪中を取りやめた。撃墜後、米国は国防相協議を申し入れたが、中国側が拒否した。長島氏は「今回の気球も、習近平氏や中国共産党の一元的な指揮統制の下で行われたようには思われません。2001年の海南島付近で発生した米偵察機と中国戦闘機の接触事案によって、米中間の政治的・軍事的緊張が高まったように、もし、習近平氏が知らなかった中で起こった事案とすれば、このような形で政治的緊張が高まることは、両国にとって不幸なことだと言えます」と語った。
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文=牧野愛博

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