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2023.02.11

絶体絶命の危機を迎えたグーグルのAI開発、遅れをとった理由

Getty Images

ピチャイCEOは昨年12月に、ChatGPTの登場を受けてコードレッド(非常事態宣言)を発動し、共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンを呼び寄せて会議を行い、幹部らにAI分野への対応を優先することの必要性を訴えたという。しかし、Google Analyticsを創設し、現在はFPV Venturesの共同創業者であるウェスリー・チャンによると、同社の「コードレッド」は、社内では「うちの社員は怠けすぎた」というメッセージとして受け取られたという。

イノベーションのジレンマ

歴史を振り返れば、グーグルは2004年の230億ドルのIPOから2カ月に、時価総額でYahoo(ヤフー)を抜いていた。同社の躍進とヤフーの衰退のエピソードは、大企業が既存の製品を優先することによって、市場での優位性を失うという理論の「イノベーションのジレンマ」の典型例とされている。

それから20年近く経った今、グーグルは同様のシナリオに直面しているようだが、ピチャイCEOは、この考えを否定している。「私は、この状況が物事を再び考え、想像し、検索に活かすためのチャンスだと考えている。我々は大胆にプロダクトを提示し、フィードバックを得て反復し、より良くしていく」と彼は、先日の決算発表後の電話会談で述べていた。

グーグルの親会社のアルファベットは、7日にChatGPTに対抗するAIチャットボット「Bard」を発表し、株価を5%近く上昇させたが、その翌日にBardが不正確な回答を生成したと報じられたのを受けて、株価を8%急落させ、1000億ドルもの時価総額を失った

しかし、誰もまだ、グーグルを完全に見捨てた訳ではないだろう。ためしに、Bard のライバルであるChatGPTに「グーグルはなぜ、AI開発で遅れをとったのか」と聞いてみると、下記のような答えだった。

「グーグルはAI開発で遅れをとっていません。今でもこの分野のリーディングカンパニーであり、AIの研究開発に投資し、多大な貢献をし続けています。近年、OpenAIなどの他社やBaidu(バイドゥ)、Tencent(テンセント)、Alibaba(アリババ)などの中国のテック企業がAI分野の強力なプレイヤーとして台頭してきましたが、グーグルは依然としてこの分野の著名なプレイヤーであり、リーダーです」

しかし、ChatGPTは2021年までのデータでしか学習をしていないのだ。このボットは、自身のライバルが現れたことすら、まだ知らないのだ。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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